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修士課程を無事卒業 [スイスでの学生生活]

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(大学の建物の一部です。授業では使ったことがありませんが、一時期この受付で働いていました。)
 先日、ジュネーブの大学院から連絡が来て、無事卒業したとのことでした。予定通りだけれど、このように正式な連絡が来てみると、やっぱり嬉しいです。2年間、スイスを離れた直後は短いと思ったけれど、今このように振り返ってみると結構長かった気がします。

 今は夏休みを利用して、インターネットを使わない祖父母達のために、ブログの一部を編集・加筆しているところです。特にこの2年間の出来事をまとめているところなのですが、こうやって見直してみると「結構色々なことをしたなあ」と感じます。もちろん、時が経つのは早く感じました。しかし、見直してみると案外色々なことがあって、「2年間って結構長い時間だなあ」と思いました。

 高校、大学、と1年ずつフランスへ留学してきました。が、これは1年の留学であって、全てが初めてづくしでした。しかし今回のジュネーブは2年間、海外で初めての「2年目」を経験することになりました。2年目は様々な分野で、初めてではないことが増えて、1年目とは全く異なる感触でした。「慣れ」はこれほどまで、心理状態を変化させる物なのか、と何度も思いました。その分、色々な分野で慣れが出てきて、離れるのは結構つらかったのですが。

 2年間居ただけあって、1年居た場所に比べると、知り合いも増えた気がします。平凡な言い方になってしまいますが、学校の友達、ホストファミリー、フランスの友人(家族)、もちろん日本の家族の支えが無かったら、この2年間やりきることが出来なかったです。特に、一番時間を長く過ごしたホストファミリーには、本当にお世話になりました。彼らは頻繁に「よくこんな変わった家族の家に住もうとあなたが思った」と言っていましたが、家族の一員のように扱ってくれて嬉しかったです(彼らは「なんとまあ泣き虫な日本人!」と思っていたかもしれませんが)

 無事卒業したのですが、卒業式には参加しません。卒業式は9月上旬に行われるので、わざわざジュネーブへ行くこともないと思います。アメリカの大学だと6月頃に卒業式をやりますが、なぜか私の学校は9月に行われます。そしてジュネーブ大学も確か10月頃に卒業式だったと思います。推測するには、卒業生全員を受け入れる場所が無いから、あえて人が集まりにくい9月に行うのだと思います。先日来たお知らせによると、各学生2人のゲストを招待することが出来ます。この卒業式、チケットを持っている人のみ参加出来るようです。200人弱の卒業生+ゲスト(そして教授、大学の運営者など)を収容する大きなホールが無いので、あえてたくさんの学生がジュネーブを離れてしまっている9月にやる、というのが私の推測です。

 そして、私は卒業式に縁が無いのだなあと思います。これを残念に思っているわけでは決してありません。ただ振り返ってみると、卒業式に参加したのは高校生の時だけです。どういう意味なのかなあと、思っていると、先日の「情熱大陸」に出ていた放送作家の小山薫堂さんが上手く表現していました。50歳を祝った後に取った休みの総括として、「何年か後に振り返った時に、この人生のハーフタイムにとった休日のことを思い出す日が必ず来るだろう。今はその意味はまだわからないけれど。」と書いていました。卒業式が人生の最重要要素だとは思わないけれど、出ないことの意味、日本に戻ってきた意味、が後に何か分かったら良いなあ、とこの言葉を聞いて少し思いました。

 と、修士課程は終わりましたが、まだまだこのブログは続けていきます。読んだ本、見た映画、旅行については今まで通り続けていく予定です。もし他に書いてほしいことがあれば、言ってください。記事のアイディアにするかもしれません。ちなみに、自分への卒業祝いとして、アイスを買いました。

2014年春学期の授業:Course à pied [スイスでの学生生活]

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 12月にあったEscalade前の10月頃から、Niveau avancé(上級レベル)のランニングクラスに参加し始めました。初級、中級を見ている先生は同じだったのですが、この上級レベルは先生だけでなく、参加している人の層もかなり異なります。初級、中級は学部生ばかりでした。が、上級クラスは大学の職員、博士課程の人、と自分より年上の人ばかりです。皆走り込んでいて(マラソンを走ったことがある人など)、最初は練習に付いていくのが大変でした。長距離といえども、一応目安のタイムが設定されているのですが(休憩時間も含め)、12月頃まではそれに追いつけず、「サークルアウト」が続きました。ちなみに、これは水泳の専門用語で、サークルとは、練習メニューの距離に応じて定められたタイム(例えば50mを50秒以内とか)。この時間内に戻ってこられない場合を「サークルアウト」というわけです。水泳では頻繁に使われているのですが、陸上の練習中にはあまり聞かないので、何というのかよく分かりません。

 「サークルアウト」が無くなってきたのは1月下旬頃。 初級・中級のクラスは2月まで冬休みですが、上級クラスは1月上旬からすぐ練習開始でした。テスト前、天気が悪い、などの理由で練習に参加するメンバーはぐっと減りましたが。12月のEscalade前は20人近く参加者が居たのですが、1月は3〜4人ということもありました。練習にもようやく慣れてきて、ついていけるようになりました。

 ちなみにこのクラス、火曜がトラック練習、金曜が長距離練習となっています。金曜の長距離練習は転ばないようにするので必死。大学の近くにある小さな山に10kmのコースがあって、そこを走ります。コースと言っても、道は整備されていないので、木の根や石がいたるところにあります。また上り下りも多いです。(鈍くさいので)私はしょっちゅう木の根につまづいて転びそうになっています。今のところ何とか転ばずに済んでいますが、毎回ヒヤヒヤしています。

 私は毎回冷や汗をかきながら走っていますが、ヨーロッパ人はこういった自然の中を走るのが好きなようです。スイスだけでなく、フランスで走っていた時もよく自然の中を走らされました。確かにトラックの周りをグルグル走っているだけでは退屈してしまいます。が、木の根が多い自然の中を走る理由はなぜなのかなあと思います。車道を走ったら危ないから、そういった自然の中、という選択になるのだと思いますが。

 このクラス、先学期は12月のEscaladeに向けて練習していましたが、今学期はとりあえず5月3、4日に行われるMarathon de Geneveが目標。マラソン、と言っても、ハーフや5kmなどいくつかの種目があります。本当は42.195kmを6から8人で走るリレーに出たかったのですが、人数が集まらず断念。そこで今年から新しくできた種目、10kmを走ることにしました。昨年も走った5kmにしようか、とも迷ったのですが、チャレンジということで10kmに申し込みました。高校の時に一度10kmを走ったことがあるのですが(体育の一環で、札幌マラソンに参加が義務付けられていました)、最初飛ばし過ぎて最後はバテバテでした。タイムもよく覚えていません。Marathon de Geneve申し込み時に、申請タイムを聞かれたのですが、よく分からず50分と言っておきました。少し心配なのはスタートの時間。ホームページによると21時スタートとなっていました。街灯はもちろんありますが、ジュネーブ郊外から中心地に向けてのスタート。暗い中スタートして、走っている途中で転ばないかなあと今から少し心配です。しっかりコースを確認して準備したいと思います。

2014年春学期の授業:Politique Extérieure de la Suisse [スイスでの学生生活]

 今学期必須となっているのは卒論だけ。が、せっかくジュネーブに残っているのだからといくつか授業を取っています。スイス人の友人に誘われて一緒に取っているのが、このPolitique Extérieure de la Suisse(スイスの外交政策)です。講義式の授業で、2003年~2011年までスイスの外務大臣(厳密に言うと連邦参事で連邦外務省で働いた)を務めた人が教えています。彼女自身の任期中の経験なども紹介しながら授業が進んでいくので、とても面白いです。そして、なんと言っても、世界でも少し特別なスイスの外交を知ることが出来るので、とても興味深いです。一応、様々な角度からスイスの外交政策を見ていっているのですが、キーワードはやはり「直接民主主義」と「中立主義」です。EUとの関係、秘密口座の調査、リビアでの人質事件(これについては詳しく後日別の記事で書いていこうと思います)など、様々なテーマをこれまでに見てきましたが、その時に必ずと言ってよいほど出てくるのが先ほど紹介した2つのキーワードです。どれほど、隣国との関係が大切になってきているといっても、小国のスイス、存在感を保つにはこの国を象徴する「中立主義」をどこまで主張するか、ということが重要のようです。「中立主義」というテーマで、授業が数週間後に行われるので、今から楽しみです。

 またこの教授がよく授業中に言うのが、「スイスは外交というテーマにおいて、自国の見解を表明しない傾向がある」です。テレビは見ないので、どういった報道がされているのか分かりません。が、新聞を読む限り、何か国際的な問題があっても、「スイスは○○の姿勢を支持/反対」という記事はあまり出てきません。少し例外的に、今議論になっているクリミアに対するロシアの行動においては、「スイスはどういった姿勢をとるべきか」という記事が出ていましたが。しかし、通常はアメリカ、フランス、EUなど大国の見解を紹介するに留まっています。もちろん、これはスイスの中立主義に大きく由来しているからだと思いますが、スイスの姿勢がはっきりしないということに不満を持っている人も多くいるのも現実です。個人的な印象としては、そもそもスイス人自体が外交にあまり興味がないというのも、新聞に大きな記事が出ない理由だと思います。周りのスイス人を見ても、「スイスがこうするべきだ」という発言する人はほとんど居ません。国内問題になると、皆熱く「政府が○○するべきだ」とか「○○の国民提案議案を出すべきだ」(こういった発言が出るところはさすが直接民主主義の国だと思います)と語り始めます。が、外交問題になるとそういう話はぐっと減ります。県が大きな権力を持っていて、各州異なるシステムを持っている以上、国の見解や姿勢ということは少し遠い話なのかもしれません。

 中立や直接民主主義というキーワード以外に、毎回話題となるのがやはり2月9日の投票結果(新聞ではすでに「9 février」と名詞になっています)。EUとの関係に影響が出るので、何度も話題に出てきます。特に、周りのスイス人が考えていることとこの授業での内容がかぶる事も多いため、その比較も面白いです。

2013年秋学期の授業:Public Policy, Economic Development and Gender [スイスでの学生生活]

 先日から新学期がもう始まってしまいました。まだいくつか紹介していない授業がありますが、その中で紹介しておきたいのがこの授業。この秋学期に取った中で一番面白かったからです。日本語に訳すと、「公共政策、発展とジェンダー」という難しい授業名になります。が、簡単に言うと男女平等を国(特に発展途上国)で進めていくために必要な政策はどういったものがあるか、ということを勉強していきました。14週(正味12週)しか1学期に無いので、全ての分野をカバーすることは出来ません。そのため、教授がテーマを選んで、それを毎週カバーしていく、というものです。

 日本でも女性の社会進出、仕事と子育ての両立、が叫ばれていますが、問題はどうやるか、ということです。もちろん、政策で全てが変わるわけではありません。でもまずは政策、ということでしょうか。貧困を減らす、にしても、識字率を上げる、にしても、それ以前に意識改革の政策が必要、というのが現状の気がします。意識を変える政策が有効かどうかは別として、「政策を実行する基礎の状態を作る政策」という気の遠くなるような状況が様々な国の現状。そういった中で、どう生活に身近なものを使って政策を実行するか、意識改革をするか、というのを見ていきました。政策がうまくいったかどうか、というのは、時が経たないと分からない場合が多いです。が、たまに「なるほど」と思える政策を見ることも出来ました。なかなか物事が進まないなあと実感し、毎回授業後は少しもどかしい気分になりましたが、興味深い授業でした。

2013年秋学期の授業:Mobilities: Critical Perspectives on Forced and Voluntary Migration [スイスでの学生生活]

 この授業は、どの学部からも受け入れている授業でしたが、法律を勉強している学生が多かったです。最初は「なぜ法律?」と思ったのですが、授業タイトルが表す「Forced Migration」つまり強制移民(難民)の話題において、法律的観点から興味を持っている人が多いからでした。

 リーディングを元にディスカッションというスタイルでしたが、他の学部(学科)からの視点というものが見えて面白かったです。自分の学科で取っている授業ではあまり聞かないような意見が出されて、「他の学科はこんな考え方をするのかな」と毎回の授業で思わされました。リーディングも簡単ではありませんでしたが、他の学科がどんなことをやっているのか、少し見えてくる授業でした。

2013年秋学期:Crisis Communication [スイスでの学生生活]

 この授業は、通常のものと異なり、毎回授業があるわけではありません。学生が職業的なことを学べるように、と行われる「アトリエ」と呼ばれるもので、2日間集中の授業。今学期はこの「アトリエ」を取るのが必須でした。そこで、私は「Crisis Communication(コミュニケーションの危機)」と呼ばれる授業を取りました。

 タイトルから授業内容は全く想像出来ませんでしたが、事前に課されていたリーディングからなんとなく、授業内容が推測出来ました。企業や機関がスキャンダルなどの問題に直面したとき、どうやって、主にメディアとコミュニケーションを取っていくか。実際授業には、企業にそういったメディア対策を教えているコンサルタント会社の人が来て、授業をしてくれました。きれいなパワーポイントを使って説明したり、普段の授業とは全く異なるスタイルでした。とても「イメージ」が重要な分野なのだ、と感じました。「ザ・ホワイトハウス」などのドラマを見ていても、イメージは大切(大統領として、どういったイメージを国民に持たれるか)、そういったイメージをコントロールする人が居ることも大事だと感じました。

 スキャンダルなどの問題が発生した時にとる、一通りの段取りを教えてもらった後は、練習!重要なのは「嘘をつかないこと」だそうですが、こういったメディアコントロールで「嘘をつかない」のはかなり難しいことのような気がします。個人的には「都合の悪い真実を言わない」のも嘘の一部分のような気がするので。

 練習はグループごと。設定は、「ある炭酸飲料会社の製品が、子供の誕生日パーティーで出され、参加者の内、3人が病気になった」という事件の後、この飲料会社の記者会見を行うというもの。CEO、専門家と配役を決め、残りのグループが「記者」の役。煽る質問、大げさな質問をあえて記者もするので、それに対して、必要最低限の情報だけを与えるというのが難しかったです。こういった質問への定番の答えは、「推測に基づいた答えはさけたい」です。これだけを連発する可能性もありますが、録画の場合、メディアが編集するのが常なので、同じことを繰り返しても問題はない、と今回の講師は言っていましたが。必要最低限に答え、でも答えを隠している印象を与えない、それがトラブル時のメディア対応なのかな、と感じた2日間の授業でした。

2012年秋学期:Development Policy [スイスでの学生生活]

 2013年9月から学期が始まってから、全く授業紹介をしていませんでした。授業が無かったわけではありません。秋学期は既に終了してしまいましたが、取った授業の感想を少しずつ書いていきたいと思います。今回紹介するのは「開発政策」という授業でした。様々な国の政策を見ていくのかな、と思ったら、一般的な(国発展のための)経済政策を見ていく授業でした。発展途上国の各政策を見ていったら面白いだろう、と思ったのですが、講義スタイル(必須授業のため)、また入門の授業だったので、一般的なことを広く見ていく、という感じでした。

 最初の学期に、歴史の授業を取りましたが、それに少し似ていました。が、今回はあくまで経済の点からどう国が発展していくか、というのを見ていく授業でした。この授業でも鍵となるのはlate-developper(後から発達した国)が、どう発展していったのか、これが成長モデルとなるかどうか。late-developperの定義も、様々ですが、主に戦後に大きく経済発展した、「アジアの虎」と呼ばれる韓国、シンガポール、台湾などが挙げられます(たまに日本も入っていますが)。ここでキーワードとなるのは、「後から」という言葉です。アメリカやイギリスなどの国より、後から発展したということです。簡単に考えると、先に発展した国のモデルをlate-developperは使うことが出来、大きなメリットであった、ということになります。が、かつてのlate-developperのように、アフリカなど現在の発展途上国が経済成長を出来るのか、というのが大きな課題です。late-developperと同じことをやれば、発展できるというほど世の中は甘くありません。(労働条件、環境汚染に対する)規制が増えて、かつての国より経済発展がしづらい、既に発展した国と経済競争をしなくてはならないなど、late-developperが大きく成長した時とは異なる時代になっています。どこまでモデルを使い、どのように応用していくか、バランスよく考えていく、というのが、政策を考える上で一番難しいことなのかもしれません。

 あくまでも経済の授業だったので、それ以外の点はあまり考慮されていませんでしたが、どういった国の背景で、どういった経済政策を施行するのか、政治の裏側みたいなものが少し見ることが出来た気がして、面白かったです。

 先駆者はモデルが無いから、その「方法/モデル」を探すのに苦労します。後から来る人達は先駆者が作ったモデルがあっても、それをどう応用していくのか、自分の状況を見極めていく難しさ、があると思います。そんなことを思いながら、受けた授業でした。

 ところで、この成長モデル、どこかの教育方針と似ているなあという印象を持ったのは私だけでしょうか。

ARS 3 [スイスでの学生生活]

 1ヶ月ほど前に、ARSというグループプロジェクトの話を書きました。来学期単位を取る授業の1つです。が、私が取り組んでいるグループプロジェクトは締め切りが夏ということで、授業予定より大幅に早く始まりました。

 7月下旬が一応締め切りだったのですが、変更に次ぐ変更で8月中もこのプロジェクトを続けることになってしまいました。今、ほとんどの作業は完了して、推敲に入っていますが。「この授業では知識以外のことも学ぶ」という話を聞いていましたが、本当のそうだと思います。私たちが調査をして結果を提出する機関は、欧米式なので、今は夏休み。なぜ夏休み中に締め切りを設定したのか謎ですが、担当者と全く連絡が取れなくなり、予定していたプレゼンも急遽キャンセルとなりました。縦割りというか、本当に「うまくやる」力を試されるプロジェクトです。幸い一人では無く、グループでやるので、心細くはなりませんが。

 私のグループには、ポーランド、エルサルバドル出身の子2人が居ます。各自個性が強くて、ちょっとした発言も面白いです。国柄のようなものが、はっきり出るような気がします。ポーランド人は仕事をテキパキやる、という感じで、一緒に作業をしていても、プロジェクトを淡々と進めていくという感じです。会話も大半がプロジェクトに関して、という感じです。逆にエルサルバドル人は、会話も結構脱線することが多いです(話の内容は面白いのですが)。そのため、ポーランドの子が脱線した会話を軌道修正する、ということがミーティング中に繰り返されます。

 「大人の事情」が多く、授業では経験出来ない苦労ばかりのプロジェクトでした。が、グループメンバーには恵まれ、ラッキーでした 。

ARS 2 [スイスでの学生生活]

 前回宣言したように、今回は、自分がARSという授業で担当するプロジェクトの内容について少し紹介したいと思います。2000年に国連が提案したミレニアムゴールというのがあります。貧困などをなくすために、2015年までに達成すべきリスト、のようなものです。このゴール、賛否両論がもちろんあり、達成できたもの、出来なかった項目があります。2015年と設定してあるため、後2年でこのゴール設定時に示したタイムリミットが過ぎます。達成できなかった部分も含めて、新たなる目標を立て直そうと今動いているのが、「Post 2015」というものです。ミレニアムゴールを参考に、達成できなかった部分、修正が必要な部分など様々なものを加味して新たなるゴールを作るというわけです。

 そして、このPost 2015のアジェンダのひとつとして、Migration(移民)が加わることとなったわけです。そこで、IOMが提案してきたプロジェクトというのは、「Post 2015に向けて移民という動きがどのように発展途上国に良い影響をもたらすのか、具体的な数字を使って示してほしい」というものでした。かなりあいまいなテーマ提示で、最初はかなり戸惑いました。具体的な数字といえども、どこの何の数字を使うのか、どこの地域に集中して調査をすればよいのか、などなど。疑問はつきませんでした。担当者ともなかなか連絡がとれず、学校ではあまり経験しないような社会勉強になっています。何とか担当者と折りあわせをつけ、そしてグループ内で話し合ってテーマを少し絞ることができました。一番数字として分かりやすい、送金とコスト、をプロジェクトの中心に持ってくることにしました。移民している人が本国に送るお金、それがどう国の発展に貢献しているか、具体的な数字を出して提出する、というのが大まかな内容。大まかなテーマが決まっても、まだまだ詰めるべきところがあります。それは、どの地域を比較するか。国や地域によっても、結果が異なるため、大体の場所を決めなくてはなりません。そうしないと、1ヶ月足らずの期間で十分な情報を集めることは出来ません。地域の決定にも少し時間がかかりましたが、南アメリカから数カ国、アジアから数カ国に決まりました。ジャーナルを読んで、数字探しが今のところ続いています。7月最初の週には完成させて、その後、プレゼンのもの(ポスターがほしいといわれているので、そのポスターとプレゼンテーション)を準備していく予定となっています。今のところはとにかくリーディングをやっているところです。6月下旬が近づくと、担当者の人とプレゼンをする日を決めなくてはなりません。どうも連絡を取るのが難しいので、私は今のところ、その点が一番心配です。さて、プレゼン本番はいつになるのでしょうか。

 私たち以外のプロジェクトは夏から開始となって(現地調査で、外国に行くグループも居るみたいです)、秋学期にレポートを完成させていくという予定になっているようです。私たちは既にリサーチ開始で、来月中には全てが終わるという少しタイトスケジュールとなっています。そのため、なんだかまだ学期中のような気がして、夏休みという実感が全くありません。

ARS (Applied Research Seminar) [スイスでの学生生活]

 春学期、つまりジュネーブでの1年が終わりましたが、全くそのような実感がありません。一応夏休みにはなったのですが、今も大学へ毎日のように行っているので、夏休みが始まったという気分ではありません。いくつか理由があるのですが、今回はその内の理由の1つを書いてみたいと思います。

 毎学期、必須科目というのがあり、春学期は2科目必須がありました。来学期は交換留学へ行く人も居るので、必須科目もそれほど多いわけではありません。が、交換留学に行かない人たち、ジュネーブに残る人必須の科目がARSです。これは、授業が存在しないクラスです。NGO、国際機関などがプロジェクトを提案して(調査ベースの)、そのプロジェクトにグループで取り組み、12月末その結果を発表するというものです。どの機関と働くか、誰と働くのか、色々駆け引きが必要なクラスだと感じました。プロジェクト自体も全て一斉に提示されるのではなく、細切れに提案され、先着順。どこまで自分がやりたいことを照らし合わせて、「妥協」するのかも鍵になってきます。

 そういった大体の流れの説明を受けたのが2月下旬、春学期が始まってすぐ。去年のプロジェクトがいつか提案され、大体のイメージの説明がなされました。その1ヵ月後にIOM(International Organisation of Migration・国際移住機関)からプロジェクトの提案が来ました。去年もプロジェクトを提案していたので、私が目をつけていたものでした。教授がこのプロジェクト提案のメールをクラス全員に送った20分後に、たまたまそのメールを読み、一番で申し込むことが出来ました。グループプロジェクトなので、定員は3~4人。このメンバー決めが一番緊張しました。出来れば「うまく」やれる人たちだと良いのだけれど、ということだけを願っていました。すると、ラッキーなことに一緒にプレゼンをやったことがあるメンバーでした。エルサルバドルとポーランド出身の2人で、このプロジェクトをやることになりました。

 提案されたプロジェクトの締め切りは6月中旬となっていました。授業の一環ではありますが、あくまでもプロジェクトを提案する機関がより大きな力を持っています。彼らの提示するプロジェクトを締め切りどおりにやることが原則です。それとは別に、授業として自分達が担当したプロジェクトを12月下旬にプレゼンすることになっています。そのため、プロジェクトごとに提示される締め切りもかなり異なります。私たちのグループの締め切りは6月中旬。6月上旬に試験が全て終わって、その数週間でプロジェクトを仕上げるのは難しい、ということで、IOMの担当者と一度会うことになりました(こういった締め切りなどの交渉を行うのも、授業の一環だとか)。

 そして4月上旬に、この担当者と会いました。色々「大人の事情」でやりづらいことも多かったのですが、とりあえずプロジェクトの締め切りは7月中旬となりました。かなり縦割りで、「大人の事情」は色々難しいことがあるのだ、と実感しました。そして、肝心のプロジェクトについては次回の記事で紹介したいと思います。
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