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The Post(2018) [映画]

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 最近、映画作品の劇場公開からDVD化へのスピードが速くなってきている気がします。単に時間が経つのが早く感じているだけなのでしょうか。この映画も、ちょっと前(と言っても調べてみると、ドイツでは今年の2月公開)に公開されたと思ったのに、「新作棚」から平常の棚に移動していました。私の行っている図書館は、DVDの新作棚があって、そこに並んでいる作品は追加料金を払って借りなくてはなりません(日本のレンタルビデオと一緒のシステムです)。作品によって、どれくらいこの棚に並ぶか、多分違うと思いますが、この作品はあっという間に「普通の作品」棚に来ていました。

 監督がスティーブン・スピルバーグ、出演がメリル・ストリープとトム・ハンクス、というだけあって、見る前から「面白くない作品」ということはないだろう、という安心感がありました。アメリカの大統領選後に大急ぎで撮ったらしい作品ですが、見てみると納得します。ベトナム戦争中の、 アメリカにおけるメディアと政治家の関係が描かれた作品です。邦題が「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」となっているように、ベトナム戦争に関連した「ペンタゴン・ペーパー」という国家文書に関する報道を中心に話が進んでいきます。見てから感じたことですが、私はこのペンタゴン・ペーパーについてはよく知らず、いつ登場したのかよく分からなかったのですが、この時代の前後に何があったのか少し把握していると、会話の流れがよく分かった気がします(見ている途中でちょっと調べた)。

 話は、この文書をスクープとして最初にとった(当時から)「大手」のニューヨーク・タイムズではなく、同じく大きく関わる、でも当時は「弱小地方紙」のワシントン・ポストという新聞社を中心に描かれています。ワシントン・ポストと言えば、今では有名な新聞(全米で発行部数第5位)ですが、当時は「弱小地方紙」。その「弱小地方紙」と政府、表現の自由と機密、と二項対立でこの映画の話を進めることも出来たかもしれません。

 ただ、それほど話を単純にさせていないところが、この映画の良いところ。ちょうど同時期に、ワシントン・ポストに初女性発行人として就任した人からの視線でストーリーが進んで行きます。そのため、政府、メディア(新聞社)、女性発行人、という3つの視点で話が展開していきます。あえて分かりやすい善対悪、のような構図はないのですが、私はそこが良いなあと思いました。色々な思惑や状況がぶつかっている感じがより、本物、に見える感じがしました。この時代に女性として新聞社のトップで働くこと、編集長(ニュースを選ぶ)立場と会社を経営していく立場、政府との関係というのがすごく分かりやすく演出されていました。以前見ていたドラマ「ニュース・ルーム」の会社内の関係に似たものが少しある気がします。

 今でもワシントン・ポストが活躍していることを考えると、展開はある程度予想出来るのですが、最後のシーンは「やられた、さすが監督!」と思いました。その前のシーンで終わっても、ストーリーとして完結はするのですが、最後のシーンを見て、「そういうことだったのね」と私は思いました。実話を元にしているため、最後は見えてしまうけれど、それでも飽きさせない良い映画でした。
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Star Wars :The Last Jedi(2017) [映画]

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 昨年公開された物がもうDVDになっていたので、早速借りてきました。新3部作の最初(エピソード7)が想像していた以上に良かったので、今回は少し期待していたのですが、その期待を裏切られる作品だったなあと思ってしまいました。

 前作と次回作を繋ぐ位置付けなので、次回作を見るとまた意見は変わるのかもしれませんが、今作品を見る限り、あまり面白いと言えるものではありませんでした。このシリーズは見る人によって、注目する点が異なるとは思いますが、私はストーリー重視です。特殊効果は良くなくても、ストーリーが良ければ満足出来てしまう人です。ストーリーに関して言うと、色々な意味、部分で広げすぎてしまっている感じでした。ストーリーを広げてしまっている分、削る(深みがない)部分が出てきてしまいます。スター・ウォーズシリーズにストーリーの深さを期待するのは酷かもしれませんが、過去の作品(エピソード4-6)はもうちょっと深いメッセージがあったような気がします。といっても、小さい頃に見たので、すごく難しく感じた記憶を「深いメッセージ」と覚えているのかもしれませんが。古いファンも大切にして、新しいファンも拡大するという製作者の意図が分からない訳ではないけれど、今回は広げすぎでした。前回はそういった意味で、上手にバランスが取れている感じがしたのですが。

 また、(前作でも少し感じ事だけれど)今回は新キャラクターの路線が完全にディズニー寄りになりました。買収されてしまったから仕方無いことなのかもしれないけれど、ディズニー的な「かわいい」感じが押し出されたキャラクターが多くなってしまっていました。私は元のテイスト(ちょっと変な、不思議な)が好きだったので、この点は非常に残念でした。

 と色々残念な部分が多かったのですが、追い打ちをかけるにように、この作品は150分!長い、と感じてしまいました。面白ければ、長い、と私は感じる人ではないのですが、この映画は「まだ終わらないの?」と何度か思ってしまいました。
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Hidden Figures(2016) [映画]

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 邦題は「ドリーム」とあまり面白くないタイトルになっていますが、原題はなかなか洒落たタイトルです。「figure」には色々な意味があって、「人物」という意味だけでなく、「数」という意味もあります。その2つをかけたタイトルになっています。正に「隠れた人物/数字」を扱った作品でした。

 簡単に説明すると、アポロ計画に携わった黒人女性のエンジニア、計算師(という名称が正しいのか分からないけれど、ロケットの落下地点等を計算する人)の話です。映画の最初に「based on true story (実話に基づいた話)」ではなく、「based on true events(実際の出来事に基づいた話)」という表示がされていたので、脚色の部分が多いのかもしれません。ただ、クレジット前の説明によると、実際にそういう人物が居て、アポロ計画に関わったというのは事実のよう。どこを脚色しているのかは分かりませんでしたが、アメリカの歴史的背景を考えると、「実際にあった部分がほとんどだろう」という感じでした。トイレはもちろん分かれていた(白人、有色人種用)時代、黒人女性がエンジニア/計算師として、仕事をするのは本当に大変だったということがよく分かります。NASAという組織内の人種、性によるヒエラルキーがよく分かる描き方がされていました。

 私は数学がずっと得意ではないので、数字に強い人というのは本当にすごいと思います。ロケットの発射/落下地点はすこしのズレで、人の命(冷戦時代という背景を考えると国家のプライドも)に関わることなので、正しい答え(数字)を出すのは相当なプレッシャーだと思います。それほどすごいことをしているのに、正しく実力が認められないのは相当フラストレーションもたまるだろうなあと思います。
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Miss Sloane(2016) [映画]

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 ロビー活動、ロビイストというと、日本ではあまり良いイメージはありませんが、英語では、「ある人々の集まり(グループ)が、特に代表者、に働きかける」という定義になっています。政治家とロビイストの金銭的癒着というのがイメージとしてあったりするので、日本ではあまり良いイメージがないのかもしれません。アメリカでは活動(資金援助など)に一定の決まりはあるものの、ロビー活動というのが政治の場で活発で、私が今まで見てきた政治ドラマでは、必ず出てくるグループでした。アメリカのロビーグループで一番有名なのは、多分ライフル協会(NRA)だと思いますが、この映画はまさに、アメリカの銃規制に関するロビイスト(規制賛成派と反対派)に焦点を当てた映画です。アメリカが舞台にはなっているけれど、登場するテレビ番組や会社は創作となっているので、NRAという固有名詞も登場はしません(似た企業/団体は出てきますが)。登場しないことで逆にこの団体の存在感がありましたが。

 ロビイストというと、色々根回しをしたり、交渉するというイメージが私は強かったのですが、具体的にどんなことをするのか、ということは分かりませんでした。どちらかというと裏方仕事なので、その裏方がどんなことをしているのか、というのが分かる作品でした。邦題は「女神の見えざる手」となっていましたが、まさに日本語のタイトル通り、「見えない」存在ではありつつ、大きな影響力を持つロビイストの仕事がどんなものなのかを表現している、珍しく上手いタイトルだな、と思いました。バリバリ仕事人間のロビイストが主人公で、この銃規制に取り組んでいくというのがこの作品です。騙し、騙し合う、騙されたようで騙されていない、という、どこまで先を読んでいくかというがロビイストの力量だと思います。映画もまさにそういう感じで、鑑賞者も作品を見ていながらもどこまで先を読めるかという(少なくとも私はそうやって見てしまった)、飽きさせない作品でした。ロビイストになりたい、と思えるかどうかは別として、良い作品でした。

 また、以前見ていたドラマ「Newsroom」の俳優さん2人が出ていて、久々に見たので、若干不思議な感じでも見てしまいました。
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Wonder Woman(2017) [映画]

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 アメリカの大手コミックには、Marvel(アイアンマン、ハルクなど)とDC(バットマン、スーパーマン)があります。似たような「ヒーローもの」、かつ、DC内/Marvel内のキャラクターが集まった映画もたくさん出ていて、最近は、どちらのキャラクターがどちらの属しているのかよく分からなくなってきました。Marvelの映画が出始めた頃は、「アイアンマン」が結構好きで何作か見ていました。(ぼーっとする頭でもなんとなくストーリーについて行けるという理由で)機内上映でも結構チェックしていました。が、あまりにも登場キャラクターが多くなり、そして話も結構込み入ってきて、最近ではあまり見なくなってきました。

 それでも、こういったコミックの「ヒーローもの」を見ないような人でも楽しんでいた「Wonder Woman」は気になっていたので、最近DVDで見ました。製作が2017年ということで、偶然だとは思いますが、ハリウッド界で色々セクハラ問題が出た年でもありました。現代的というか、時代はちょっと変わったんだなと思いました(3年前公開されたスター・ウォーズを見ても同じことを感じました)。伏線がちょっと軽い(簡単に分かってしまう)と思ったけれど、まあまあ楽しめた映画でした。

 作品の舞台は第一次世界大戦ということで、戦争関連の単語が出てきます。前線部分の2ヶ国が対峙している部分を「No man's land(無人地帯)」と英語では表現します。man(人/男)という意味にかけ、No manのエリアを女性(woman)ヒーローが進んで行くのは、なかなか良い表現方法だと思いました。
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Kingsman :The Secret Service (2015) &Kingsman : Golden Circle (2017) [映画]

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 フィクションやファンタジーだけれど、「この設定、この場所ならあり得る世界観だよね」というのが私の中にいくつかあります。「となりのトトロ」や「千と千尋の神隠し」は日本のいくつかの場所であり得る世界観だなあと思うし、「メン・イン・ブラック」のようなエイリアン対策部はアメリカならあり得る、と思ってしまいます。(設定では一応、どの政府にも属さない秘密機関と一応なってはいますが)Kingsmanはイギリスならあり得る世界観だなあと思ってしまいます。作品内でKingsmanがあるとされているスーツ店のある通りは、実際に歴史あるスーツの仕立て屋が多いロンドンの通り(Saville row)として有名らしいです。また続編を見て感じることですが、Kingsmanという名前も多い国王、女王が居る国イギリスならではの名前だと思います。

 このKingsman、続編(第2作目)が昨年ドイツで公開されていて、見たいなあと思っていました。ただ、これが続編とは知らずにいて、友人から初編の存在を聞き、DVDになるのを待っていました。早速図書館で今回借りてきて、2日連続で、第1作、2作を見ました。独立した作品ではなく、続きとなるので、2日連続で見て良かったです。

 007シリーズの影響を大きく受けていると思うけれど、個人的には007シリーズよりこちらの方が好きです。続編は色々やり過ぎな部分が多くて、最初の作品ほど好きにはなれませんでした。ブラックジョークの加減、描写等、ちょっとやりすぎかな、という感じが1、2、両作品にあるけれど、色々な部分において私が好きなバランス加減でした(特に第1作目は)。確かに、対決/決闘シーンは、描写が過激すぎる(手がパックリ切られたり)けれど、シーンに全く合わない音楽を使ったりして、シュールな感じになっていました。「ザ・真面目な人」という役がぴったりのコリン・ファースもお笑いになりすぎ、でも笑える「真面目な」スパイを演じていたし、ちょっとあり得ない武器(gadget、「ちょっとした」道具) も紳士なスパイには合ってしまっていました。

 また、(特に続編は)アメリカ社会、アメリカ人に対する皮肉もかなり効いていました。「アメリカ人、ここまで自虐的になれるのか?」と見ながら思ってしまいました。鑑賞後に確認してみると、イギリス製作となっていたので、あのブラックジョーク加減、皮肉さに納得。

 スパイ映画に詳しくない私でも、所々由来が何となく分かるオマージュがあったりして、楽しい映画でした。セリフも色々ジョークや皮肉が入っていたりして、字幕翻訳家泣かせの映画だなあと思いました。私が気に入ったバーの決闘シーンで「Manners maketh man」というセリフがあるのですが、簡単に訳すと「マナーが人を作る/育てる」という意味になると思います。ただ、これは古い英語表現(シェイクスピアの時代ぐらい古い)。このセリフを言う前に交わされた会話、それでも敢えてこの表現を使ったことの(製作者の)意図を考えると、なかなか深いなあと私は思いましたが、日本語字幕ではどこまで表現されているのか、ちょっと気になりました。
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Four Weddings and a Funeral(1994) [映画]

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 20年以上前の映画ですが、現代にも通じるテーマが色々あり、楽しんで見ることができました。良い映画(そして良い映画ソング)に、時代は関係ないとも言えるかもしれません。

 原題は「4つの結婚式と1つの葬式」となるので、映画を見る前は、「もう映画の内容が分かっちゃうじゃん」と思ってしまいました。その点、英語の文法も無視して「フォー・ウェディング」とした邦題はある意味なかなか上手なタイトルの付け方かもしれません(正しい文法にすると、「フォー・ウェディングス」となるはず)。タイトル通り、4つの結婚式、1つの葬式が登場するわけですが、それでも各イベント、なかなか考えさせられるセリフがあったりして、気づけば結構映画を楽しんでいました。

 イギリスの映画だからなのか、よく分かりませんが、皮肉の対比が上手だった気がします。現在の法律では結婚できないゲイのカップル達が、結婚できる/した男女のカップル以上に上手くやっていたり、耳が聞こえない主人公の弟が上手にコミュニケーションを取っていたり等、最後の最後まで、この皮肉の対比が良かったです。

  また、主人公である、ヒュー・グラント「偉そうではなく、そして頼りない人」を演じたらピカイチだとこの映画で再認識しました。「偉そうな、頼りない人」の役もいくつかの映画でありますが、やはり前者の「偉そうではなく、そして頼りない」の方が合っている気がします。
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007 Casino Royale (2006) [映画]

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 週末、ちょっと何も考えず映画を見たいなあと思った時があり、その際友人から勧められていた2000年代のジェームズ・ボンドを見てみました。(日本の「寅さん」シリーズのように)定番があって、それに沿っていくというのは、結構見ていて楽かなあと思ったからです。この007シリーズ、20作弱あるようですが、見たのは本当にいくつかだけ。というのも、最初に見た作品の印象があまり良くなく、若干敬遠していたシリーズだからです。

 学部時代の授業の一環(確か、サイードの「オリエンタリズム」に関連して)で、007 You only live twice(007は二度死ぬ)を見ることになりました。日本が舞台になっている作品で(1967年公開)、「そういう時代だった」と言えばそれまでですが、女性/日本に関する描き方は見ていて気持ちの良いものではありませんでした。授業でこの作品に関して、課題で発表かレポートを書くことになっていて、結局私は3回見たのですが、以降特に見たいと思う映画シリーズではありませんでした。

 数年後、今度は「007 Goldeneye(ゴールデンアイ)」(1995)を見ることになりました。スイスのホストマザーのお父さんが007シリーズのファンで、全作品のDVDを持っており、なぜかこの作品を見ることになりました。私が見た作品から、30年近く経っているので、作品の時代も結構変わっていて、意外と楽しめて見ることが出来ました。この作品で、ジェームズ・ボンドとMのやりとりが好きになりました。

 という経緯で、映画館では見ないけど、飛行機の機内上映やDVDでは見てもよいかな、というシリーズになったのでした。そこで、まだ見たことがなかった現ジェームズ・ボンドの「カジノ・ロワイヤル」を先日見たのでした。お約束のプロットで、お約束の秘密兵器も登場し、安定感たっぷりでした。最初に見た60年代の頃に比べると、時代は変わったなあと思いました。60年代の作品は当時を反映していましたが、この作品も現代を映し出していました(テロ、国家という単位ではくくりきれない組織etc)。過去のジェーム・ボンドと比べると、少し人間味のあるジェームズ・ボンドだなあと思ってしまいました。ずっとかっこいスーツを着ているイメージでしたが、この作品ではスーツ以外(それでも高そうな衣装ばかりでしたが)の洋服も登場していました。大きな驚きはなかったけれど、楽しめた作品でした。
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Die göttliche Ordnung (2017) [映画]

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(フランス語圏スイスの人からもらったので、タイトルはフランス語ですが、オリジナルはドイツ語)
 滅多に見ることがない(市場に出る数が少ないというのもあるのですが)スイス映画を先日見ました。クリスマスプレゼントとしてもらいました。スイスドイツ語圏が舞台となっているので、原題はドイツ語で日本語に訳すと「神なる秩序」というような意味になると思います。スイスの女性参政権運動を描いたコメディー映画です。ちなみに、スイスで女性の参政権が認められたのは1971年。

 多分、スイスの事情を知らない人だと、最初の反応は「えっ、スイスって日本より女性の参政権が遅かったの?」だと思います。私もスイスに行くまでは知らず、スイスのホストファミリーからそういう話を聞いて、びっくりしました。直接民主制を取っているスイス、国の重要事項(国民投票をするかどうかも)は全て国民が投票で決めます。1971年にようやく女性の参政権が認められたのですが、国レベルでの国民投票は2回目。1959年の国民投票では、過半数の賛成票が得らなかったわけです。1959年、1971年、両年とも投票したのは、投票権がある人達。もちろん、男性(のみ)。ただ、ここからの道のりも長く、完全にスイス全体で女性が投票出来るようになったのは1990年。アッペンツェル・インナーローデン準州という州は、スイスの中でもかなり保守的な州で、今でも「昔ながらの直接民主主義」を保っている州として有名です。投票は紙ではなく、挙手。この州が最後まで、女性の参政権を認めず、1990年、ついに国から促される形で、参政権が認められたそうです。スイスのホストファミリーから、このような話を聞いてはいたのですが、当時を描いた映画を実際見てみると、「うそでしょー!」と何度も思ってしまいました。そのため、映画ということもあるし、少し大げさな表現も多いかな、というのが映画を見た第一印象でした。しかし、作品鑑賞後に、監督のインタビューを読んだのですが、映画に登場する台詞は全て当時社会で言われていたこと、と書いてあって、かなりびっくりしました。これをシリアスな映画として撮ることも出来たと思いますが、そこをあえてコメディーにしているのは面白いと思いました。当時の滑稽な論調を笑いに変えて、でも強いメッセージのある映画でした。

 スイスの映画ということで、「スイスっぽい風景」がたくさん出てくるのですが、中でも笑えたのが、スイスのドイツ語。スイスドイツ語圏の小さな村が舞台ということになっているので、全編通してドイツ語。ドイツ語勉強中ということもあり、(フランス語)字幕で見たのですが、ほとんど何を言っているのか分かりませんでした。というのも、スイスのドイツ語は、ドイツ人でも「あれはドイツ語ではなくて、別の言葉だ」というぐらい、ドイツで使われているドイツ語と異なります。ドイツ語圏のスイス人もHochdeutsch(標準ドイツ語)、Schweizerdeutsch(スイスドイツ語)と言って区別しているほどです。単語も若干違ったりするのですが、アクセントが異なるというのが私には一番理解しづらいです。フランス語にも、地域によってアクセントの違いがもちろんあります。国境を接しているフランスとスイスでも、アクセントが違います。私も聞いていて、「あー、この人のフランス語はスイスのフランス語だ」となんとなく分かります。ただ、コミュニケーションを取れないほどアクセントが強いということはないので、標準ドイツ語とスイスドイツ語も、それぐらいの差だろうとしか思っていませんでした。しかしこの映画を見て、理解出来たドイツ語は、イタリアからの移民が話す標準ドイツ語でした。スイスドイツ語を聞いた後に、彼女の台詞を聞くと、「なんて分かりやすいんだ」と思ったほどです。
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Ce qui nous lie(2017) [映画]

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 私が住んでいる都市があまり大きくないという理由と、ドイツが吹き替え大国であるため、なかなか字幕で上映する映画館がありません。わざわざ「原語の日」という日、字幕で上映する日を週1で設定している映画館もあるほどです。「映画は字幕」と思っている私には残念です。

 近くに小さな映画館があり、様々な作品を上映しています。商業的な大作でなく、様々な国からの映画を上映しています。フランス映画も結構上映していて、先日は字幕公開をしている作品があったので、見に行ってきました。

 セドリック・クラピッシュという監督の最新作でした。(少なくとも日本での)フランス語の授業で必ずと言ってよいほど見る「スパニッシュ・アパートメント」シリーズの監督です。私もこの監督の作品が好きで、よく見ます。「みんなでがやがや、ワイワイ」というシーンを、不思議な色づかいで撮る監督です。

 さて今回の作品は、ブルゴーニュ地方でワイン畑を受け継いだ兄弟の話でした。若干話が読めてしまいますが、それでも風景がキレイなため、見ていて飽きませんでした。さすが、というか、ずっとワインを飲んでいました。家族が来たから、ちょっと一服、お祝いに、ケンカの後に、夕食前に。ワイン造りで生計を立てているのですが、生活の全てがワインという感じです。1年を通じて、気候に影響されながら、ずっと同じ場所でワインを造り続けるという、私にはとうてい出来ないことなので、すごいなあと思いながら見ていました。
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