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2月9日の投票後 [フランスとスイス]

 時が経つほど、2月9日の投票は大きな出来事だったのだ、と感じさせられます。年に3~4回の国民投票がスイスでは行われています。そのため、一度結果が出るとメディアの話題に上らない議題もたくさんあります。2013年最後に行われた国民投票(11月ごろ)で、「会社の幹部と一般の従業員の給料の差を1 :12に留める」という議題がありました。国際企業がたくさんあるスイス、かなり大きな議題(日本の新聞にも結果が載っていました)になっていたのですが、結果が出た後はあまり話題にならなくなってしまいました。

 しかしこの2月9日の投票は、2ヶ月近い時間が経った今でもよく話題に上ります。そして、投票結果の数週間後、私のホストファミリー宅にフランスの親戚が来て、もちろんこの話題になりました。彼らはホストファミリーの親戚ですが、フランス人。「2月9日は大変だったね」という話から、国民投票の話題になりました。その時の話が面白かったので、今回の記事に書いていきたいと思います。

 直接民主主義の国であるスイス、フランスより国民が政治に及ぼす影響が多いと思います。そこでこの親戚が問いかけた疑問が「2月9日の結果はやはりスイス人としてのアイデンティティーを守るため?」ということでした。(ジュネーブ出身の)スイス人の答えは「違う」でした。スイス人である以前に、ジュネーブ人である、ということでした。外国人に自分の自己紹介をする場合、スイス人というより、ジュネーブ人と言った方が良い、とも言っていました(スイスとスウェーデンと間違える人が結構居るらしい)。様々な理由がありますが、スイス人以上にジュネーブ人、という考えが強いという考え、私は結構納得できます。周りのスイス人、ほとんどがジュネーブ出身ですが、他州から来ている人たちもいます。そういった人たちの話を聞いていると、よく自分の州の話をしています。スイス全体というより、自分の州で食べているもの、有名な祭り、などです。これはジュネーブ出身の人にも言えることです。12月に行われるEscaladeについてジュネーブの人に聞くと、詳しい答えが長く返ってきます。とても有名なものだ、と思っていましたが、スイス国内では必ずしも有名ではないようです。「名前は聞いたことがある」と別の州(Bern州)出身の人は言っていましたが、Escaladeで何をするのかは知らないようでした。ジュネーブでは相当盛り上がっているのに、と私はびっくりしてしまいました。が、スイス人、より、自分の州出身という意識が強いのであれば、この状況にも納得できます。

 と、自分の住んでいる州に対する愛着が強いですが、スイス人を「団結させている」のが色々な考え方。中立、直接民主主義、などです。2月9日の投票結果も直接民主主義が影響を及ぼしている(国民の意見が良くも悪くも反映されやすい)、と言われ、「この国民投票のシステムを見直すべきだ」という声も出ています。しかし、具体案は出ておらず、スイス人にとって重要な直接民主主義の形を変える確率はかなり低いと思います。

 これらの話を聞いたフランス人は「じゃあ、この『考え方』がスイス人がまとまるアイデンテティーなのではないのか?」と結論していましたが、あくまでもジュネーブ人からすると、「スイス人としてまとまることはない!」ようです。まとまる時にはまとまる(団結が案外好き)フランスとスイスの違いを見たようで面白かったです。

 蛇足になりますが、2月9日の結果を見てフランス人は「いやー、スイス、EUとのこれからが大変なことになりそうな結果になっていたね」と言っていました。が、先日行われたフランスの地方選挙ではEUや外国人移民に批判的なFN(国民戦線)が議席を伸ばすという結果に。スイスとフランス、これからどうなっていくのでしょうか。

スイスから見たフランス人 [フランスとスイス]

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 では、「プチスイス」の人は隣国のフランスをどう見ているのでしょうか?特に変わった印象を持っている感じはしません。ただ海がないスイス、夏のバカンスに南フランスを選ぶ人が多いため(同じフランス語を話すし)、フランスをよく知っているスイス人が多い印象を受けます。そのため、写真のようなイメージを持つスイス人は少ないと思います。もちろん、これは固定観念(外国人から見たフランス人)ですが、あながち全てが嘘というわけでもありません。パリではベレー帽を被り、片手にパンを持ったおじさんを今でもよく見かけます。そして、スイスにもそういうおじさんが存在します。

 スイス人の間でフランスが話題になるのは、ほとんどの場合EUの話題のみ。今ではその話題のほとんどが経済についてですが、「フランスのようにならなくて良かった、EUに入っていたらどうなっていたか分からない」と胸をなで下ろしているスイス人が多く居ます。

 また、政治のシステムが異なるため、その話題でもフランスがよく例として挙げられています。スイスの正式な国名はスイス連邦。国という1つのものではなく、各州が集まって出来た国です。そのため、アメリカのように州の力が強いです。イタリア語圏、ドイツ語圏、フランス語圏が混在するという背景も州国家である理由の一つです。日本やフランス、アメリカの政治形態から想像する「首脳」というものが存在せず、各州が各自で政治を行っています。スイスの政治形態については、また後日ゆっくり書きますが、一極集中のフランスとはかなり違います。そのため、「大統領に大きな権限を与える国(=フランス)と、自分たちは違う」という意識を強く持っています。

フランスから見たスイス人 [フランスとスイス]

 今年の8月まではフランス人から「スイスへ行くの?大変だね」と言われ、9月からはスイス人に「フランスで1年?大変だったね」と言われるようになりました。それだけお互いがマイナスイメージを持っているわけですが、部外者の私から見ると子供のケンカのようで笑えてきます。そこで今回はフランスから見たスイス人のイメージを紹介してみたいと思います。

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 スイスと言えば、プチスイス。これはチーズの名前です。スイスで作られた物ではなく、フランスのチーズ(ノルマンディー地方)です。一応チーズと呼ばれていますが、発酵しただけ乳製品なので(熟成はしていない)、ヨーグルトのような感じです。食べ方も、フルーツを入れたりジャムを入れたり、ヨーグルトのような食べ方をします。蛇足ですが、ヨーグルトとプチスイスの違いは、使う菌が異なるためだそうです。

 なぜフランスのチーズがプチスイス、「小さなスイス」と呼ばれているのか。少し調べてみたところ、ノルマンディー地方で働いていたスイス人がこのチーズの考案者だから、だそうです。自国に「小さな」とつける人は居ないと思うので、フランス人が命名したのだと私は信じていますが。

 フランスで誰もが知っているこのチーズが「プチスイス」と呼ばれているため、スイスをからかう時にも、この言葉が使われています。国の「小ささ」にかけて(子供のような、という意味も入っていると思います)、このようにスイスのことを呼んでいます。私がスイスへ行く、と言うと「『プチスイス』へ行くのだね」とよく言われました。この言葉、スイスを指す言葉としてあまりにも定着したため、スイス人も半ば諦めた感じで「自分たち、『プチスイス』だし」と言っています。

 更に、スイス人はのんびり話すことでも有名。大げさなスイス人の真似をしているフランス人が多い、と思っていましたが、スイスに着いてびっくり。本当にのんびり話す、という感じです。去年はフランスでもかなり早く話すパリに1年居た為、そのスピードに慣れてしまった私。スイス到着当初(そして今でも)、かなりゆっくり話すなあと、少しせっかちになってしまいます。

フランスとスイスのフランス語 [フランスとスイス]

 国境を接していて、同じ言語を使っていても、使う言葉が少し違ったりして少し戸惑うことがあります。最初に困ったのが数字。

 フランス語を勉強し始めたのはアリアンス・フランセーズ札幌。フランス政府の機関なので、ここで教えられるのはフランスのフランス語。以前も紹介したことがありますが、数字は特に込み入っています。60ぐらいまでは大丈夫なのですが、70は「soxiante-dix(60+10)」、71は「soxiante et onze(60+11)」、80は「quatre-vignts (4×20)」、93は「quatre-vignt-treize(4×20+13)」となります。ベルギーやスイスでは70(septante)、 80(quatre-vignts)、 90(nonante)と60より前の数字と同じように数えていきます。80にはoctanteという言い方もあったようですが、今では使いません。そのためこの仕組みを見た時、「一体フランス人の頭の中はどうなっているのだ?ベルギー人のように単純に数えていくことが出来ないのか?」と思ったことを記憶しています(これは自分だけでなく、スイス人も同じように考えているとのこと)。が、一度慣れてくるとそういったことは気にならなくなってきます。逆に、単純に数えているはずのベルギーやスイスで逆に「nonante huit(98)」と言われると、一瞬「いくつ?」と思ってしまいました。

 スイスで90(nonante)と言われると、個人的にはquatre-vignts(80)と数えるのだから、90にはそのまま10増えて、quatre-vingt-dixにしてよ!と思ってしまいます。が、「郷に入っては郷に従え」、少し我慢してスイスの数え方で数字を言うよう努力しています。しかしフランス式に慣れてしまっているため、会話のテンポが速い時は、ジュネーブ式に「変換」出来ずフランス式で言ってしまいます。

 同じフランス語でも、言葉の意味がフランスとスイスで異なる時があります。(スイスのフランス語を使う)ホストファミリーと(フランスのフランス語に慣れている)私、使ってみないとその場所独自の言葉だと気付かないこともあります。「タオル」もその内の一つ。私はタオルをservietteと言いますが、スイスではlingeと言います。このlinge、フランスでは汚れた洗濯物を指すときに使います。「汚い」という意味の「sale」という形容詞を付ける時もありますが、省略してしまう場合も多いです。そしてある日ホストマザーから「新しいlingeは風呂場の物干しにかけておいたから」と言われました。「なぜ汚い洗濯物が風呂場の物干しに?『新しい』汚い洗濯物って何だ?」と私は思ったのですが、ここで彼女が言っていた「linge」とはタオルのこと。新しいタオルを風呂場の物干しにかけておいた、という意味だったのでした。このフレーズを言った彼女もすぐに「あっ、linge、フランスと意味が違うか。フランスのフランス語だとservietteだっけ?」と説明してくれたので、すぐに誤解は解けました。スイスの地方へ行くと、スイスでしか使われていない言葉というのも多くあるようです。が、ジュネーブは特にフランスと接している部分も多いため、フランスのフランス語の影響が大きい部分もあります。しかし、それがどこまでなのかというはっきりとした境界線はないため、使ってみないと分からないという状況です。

フランスとスイスのナイフ [フランスとスイス]

 ジュネーブはフランスと国境を接しているため、またフランス語という同じ言語を扱うため、お互い良い印象を持っていないものの、切っても切れない関係にあります。ジュネーブで生活し始めて約1ヶ月、色々な場面でフランス・スイスまたはフランスVSスイスという関係を見ることが出来ました。このブログでもそういったことを少しずつ紹介していきたいと思います。結構色々あるので、新しく「フランスとスイス」というカテゴリも作りました!

 私が読んでいる辛坊治郎さんのメルマガでは今(少し季節外れですが)、アウトドアの特集をやっています。アウトドアとイメージがあまり結びつかない人なので、最初はちょっと驚きましたが、色々知っているのでかなり「通」なようです。わざわざメルマガにそういうコーナーを作るくらいなので、「通」でないと連載も続きませんが。

 最近の連載では、ナイフについて書かれていました。その彼が勧めるのが、Opinelのナイフ。スイスと国境を接するフランスのHaute-Savoie県で始まったナイフの会社、フランス人皆最低1本は持っています。ちょっとした野菜を切ったり、鉛筆を削ったり、ハサミ代わりに物を切ったり、生活の様々なところで使っています。ポケットに入れて随時持ち歩いている人も居ます。私もこのナイフの存在を知ってはいたのですが、自分で所有するようになったのは最初のフランス留学から帰ってきた3年後ケニアへ向かう時でした。「ナイフを1本持参するように」と言われ、何も分からないままとりあえずキャンプ用品店へ行きました。自分は専門家でもないので、とりあえず物が切れれば良いだろう、とナイフ売り場へ向かいました。他のキャンプ用品同様、値段は幅広かったと記憶しています。が、Opinelが手頃で便利とフランス人の友人が言っていたことを思い出し、迷うこと無くOpinelを購入しました。

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 ケニアでは木を植える作業をしたので、支え木を切ったり、何かと重宝しました。写真で、女の子が持っているナイフがOpinel。現地の小学校で出前授業をした時にナイフが役立ちました(工作のようなことをやったので)。ケニアへ行った後も、特に海外で旅行に出かける度持って行くようにしています。

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 そんなOpinelに負けないナイフがスイスにもあります。スイスのナイフ、Victorinox社のものです。ナイフ自体の機能は少し劣るのですが、他の機能が付いています。私が知っている限り、ナイフ、栓抜き、やすりの機能が付いています。写真のナイフは少し機能が付きすぎ、という印象がしますが、このナイフに付いている栓抜き機能はとても便利だと思います。ワイン好きの父と旅行して思ったのですが、栓抜きというものはなかなか売っておらず、買うには少し高すぎます。ある場所でワインを買ったとき、栓抜きがないことに気づき、お酒屋さんをはしごし、その場所で栓を抜いてもらったことがあります。このときに「スイスナイフは旅行に欠かせない」と強く実感しました。が、それ以降スイスナイフが必要だと実感する機会がありません。そのため、ジュネーブに居ても、まだそういった店に行っていません。今のところOpinelで事が足りてしまっています。
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