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Maestro (2023) [映画’21-]

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 フランス映画「転落の解剖学」を見たのが昨年末。昨年のカンヌで賞を取り、またドイツ人女優が出ているというのもあって、ドイツでは秋からロングランで今も映画館で上映しています。アメリカの賞レースでもノミネートされているというのもあり、この作品がどこまで行くのか、というが私は個人的に気になっていました(ドイツのニュースでも割と話題になっていた)。そのため、今年は例年以上に映画の賞レースを追っていて、ノミネート作品もいくつか見ました。

 その流れで見たのが、この「Maestro」でした。名前を聞いたことはあるけれど、詳しくは知らないレナード・バーンスタインの伝記映画がこの「Maestro」。音楽家、という言葉が一番彼の職業を表していると思います。音楽がメインの作品かと思ったら、割と人間関係にフォーカスしていたので、期待値によっては評判が分かれる作品だと思います。邦題の「マエストロ: その音楽と愛と」が一番内容を上手く表現している気がします。

 少し思っていた映画とは違ったけれど、前半の映像は映画好きにはたまらないカメラワークでした。映画冒頭のカメラワークは個人的にとても好きでした。煙草は全く好きじゃないけれど、スクリーン上、特に白黒映像では煙草の煙は映像美として、とても見栄えが良いし、映画好きが撮ったんだなあ、ということがよく分かる前半の映像でした。時代の移り変わりで、カラーの映像になっても、カメラワークのすごさは変わらず。夫婦喧嘩シーンのカメラワークは、すごく上手く計算されていて、私好みの撮り方でした。この夫婦の関係、私の理解を超える関係性だったけれど、外からは分からない夫婦や人との関係性の真理を突いている部分もあって、深いセリフが多かった気がします。

 正直、特に見たいと思っていた作品ではなかったけれど、あまり知らない人の伝記映画だったので割と楽しめました。ちなみにアカデミー賞、期待通り、私が気になっていたフランス映画の「転落の解剖学」が脚本賞を取っていました。確かにこの作品、脚本がしっかりしていました。が、良くも悪くもフランス映画という感じなので、ハリウッドが脚本を評価した、というのは若干意外でした。
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クロアチア旅 最終回 [旅’20-]

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(ザグレブのFlat Whiteも美味しかった)
 ザグレブ市内ツアーでは、色々な隣国の統治下にあったということがよく分かりました。オーストリア・ハンガリー帝国だけでなく、イタリア(ベネツィア共和国)の支配下になったこともあるのがクロアチア。これだけで、国がずいぶんと複雑な歴史を歩んできていることがよく分かります。料理は、ドイツ/東ヨーロッパっぽい感じでしたが、コーヒー文化が根強いのは、イタリアの影響が残っているからでしょうか。「ザグレブに、スターバックスが無いということから、コーヒーにこだわりがあることも分かる」みたいなことを、ガイドの人も言っていました。私もこの説を結構信じています。イタリア然り、メルボルン、(かつての)ハノイ、どの場所もスタバが無く/少なく、コーヒー文化が根強くある都市/国で、私は割とこういう(コーヒーに対する強い)こだわりを持っている場所が好きだったりします。3日のザグレブ滞在中、4ヶ所ほどでコーヒーを飲みましたが、どこでも美味しかったです。特に、私の好きなアメリカーノ(エスプレッソにお湯を加えたやつ)の味がしっかりしていて、外れがありませんでした。ドイツだと、たまに、アメリカーノ、なのに、エスプレッソの味があまりしないコーヒーが出てきて、「フィルターコーヒー?」と思うこともしばしば。

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(無事に入手したコーヒー豆)
 滞在中はいくつか朝食、午後のコーヒーとカフェを何軒か回りました。宿泊していたアパート(民泊)の近くにカフェ兼焙煎所のCogitoという店があったので、最終日はここで朝食を食べようということになりました。が、どちらかと言うと、カフェの品揃えで、朝食の選択肢はあまり無くて断念。朝食を探して市内を散策していると、前日行って、コーヒーが美味しかったカフェ前を通過したので、私はここでコーヒー豆を購入することに。コーヒーに割とこだわっていそうな店だったので、豆を売っているかな、と勝手に思っていたら、豆は販売しておらず。すると店員さんが、「市内のカフェに豆を供給しているカフェ兼焙煎所があるから、そこで豆を買えるよ」と親切に教えてくれました。店名を聞くと、先ほど一度入店したCogitoのことでした。再度、Cogitoへ戻り豆を買ったのですが、記憶をたどると見たことのあるパッケージ。滞在中に訪れたカフェのほとんどが、ここの豆を使っていたのでした。確かに美味しい豆なので、市内の色々なカフェがこの焙煎所の豆を使っているのには納得。ただ、この焙煎所が牛耳っている、というイメージも私は勝手に持ってしまい、映画に出てきそうな麻薬(コーヒー)縄張り争いもあるのかな、想像してしまいました。

 ドイツへ戻ってきて早速豆を挽いて、コーヒーを飲みましたが、とても美味しかったです。
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クロアチア旅 その3 [旅’20-]

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 観光都市を目指しているということもあるのか、色々な博物館がザグレブにありました。変わり種で「失恋博物館(Museum of Broken Relationships)」というのがあって、行ってきました。自分の失恋にまつわる品を短いエッセーと一緒に展示している博物館でした。私は「映画監督とか作家が来て、展示物からヒントを得て作品を作るのかな」と色々想像して楽しめました。一緒に行った友人は「映画や小説で既に見たことのある話が多かった」と批判的な感想でした。思い出の品、ということもあって、展示されている物も様々。人は色々な物に思い出を結びつけるということがよく分かるし、また人間の感情というか、執着心の狂気的な部分もよく見えてきます。展示物のほとんどが、男女の失恋(たまに家族の悲しい別れ)だったけれど、もっと広い意味での「別れ」を展示しても良かったのかな、と思いました。例えば、ペット、だったり、作品だったり。

 展示品そのものというよりかは、それを説明する文章力(翻訳力もかも)が物をいう展示会だった気がします。私が良いなあと思ったのは、ドイツのカップルの別れ。自転車の工具(名前は忘れた)を使った、男女のつかず離れずを上手く表現していると思いました。
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Poor Things (2023) [映画’21-]

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 昨年末から予告編を何度か見かけていた作品。映像の感じが結構独特であまり好きではなくて、元々見る予定はありませんでした。それでも賞レースで話題になっているので、見てきました。

 予告編を見ただけでは、正直映画のメインテーマを私ははっきり理解出来ませんでした。映画を見終えた今、「確かに現代社会のテーマ」で、2024年だからこその作品だなと思いました。ただ、予告編でも感じた独特の映像の感じ、過激な描写も結構多く、更に独特なサウンドトラック/映画音楽が2時間近く続くので好みははっきり分かれると思います。私にはちょっと耳障りの音で、イヤフォンで鑑賞する機内上映で見るのは多分キツいだろうなあと思いました。なので、映画館で見て良かったです。決して耳心地の良い音楽ではけれど、主人公の感じている「違和感」を上手く表現し、その感覚を鑑賞者にも感じさせるにはぴったりの映画音楽でした。

 作品テーマの一つが「力(関係)」だと思うけれど、これがどんな風に社会で変化してきた/してきているのか、というのが上手に表現されていました。一見すると変化している様に見えている事でも、よくよく見ると構造自体はそれほど変わっていないということ、現実社会ではある出来事を上手く、「突飛な」映像で表現していたいと思います。社会の「突飛なこと/変わったこと」と「普通」の線が割と明確な様で、でもそれぞれの「ロジック」や考え方を聞くと、その線がぼやけてくる感じが上手に表現されていると感じました。
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