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偶然と想像(2021) [映画’21-]

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 「ドライブ・マイ・カー」の監督作品が、デュッセルドルフ公開になったので見に行ってきました。それが「偶像と想像」。予告編をチェックしていかなかったので、どんな作品なのかよく分からず見ましたが、3つの短編からなるオムニバス映画でした。珍しく、邦題よりドイツ語/英語タイトルの方が作品を上手く表している気がしました。ドイツ語は「Glücksrad(運命の女神の輪/車輪)」、英語は「Wheel of Fortune and Fantasy(運命と想像の歯車)」となっていて、この作品のテーマをビシッと言い表していると思います。

 開始5分で「これも、村上春樹が原作?」と思うぐらい、ちょっと回りくどく、でも共感出来る表現が続きます。本作は、村上春樹が原作ではないけれど、この小説家っぽい作風と親和性がある監督なのかもしれません。そして、この監督作品の特徴である、「車内のシーン」が本作でありました。オムニバスの第1作目は車内という狭い空間を何分にも渡って見せ続け、また観客を飽きさせないすごさがあって、この監督作品の特徴なのかなあと思いました。車内の会話(セリフ)も「普段こんなこと言わないよね」という表現が続くのだけれど、なぜか相づちとかやりとりと共にすごく「リアリティ」がある内容に私は感じました。3作の中で、作品名、内容共に一番面白かったです。

 第2作目は、タイトルが意外と深い(他の2作のタイトルも良いんだけれど)。この短編最後に、タイトルの意味を考えると、色々考えられて知的好奇心が刺激される感じがします。日本社会の色々な、表面的、根本的な問題が短時間で上手に描かれ、且つ、細部の伏線が良いです。ただ、この作品内に登場する嫌な若い男の子のキャラクターに、私が「人として嫌だなあ」と思う要素全てつまっていて、ずっとイライラしていました(それだけ作品に感情移入出来たってことでしょう)

 最後、3作目は、あまり感情移入出来なかったのだけれど、この3作品全体の作風をキレイにまとめていました。正直、3作品に共通登場人物/背景があるわけではありません(私は少なくとも分かりませんでした)。でも各作品、「渦中にいる人達は悲惨/かわいそうだけれど、俯瞰で見ると笑っちゃう」みたいな部分があります。下手するとコント/コメディ劇になってしまう、でもならない、繊細な部分を上手に描いていました。作品の一般的なジャンルとしては、「ドラマ」とかの分類になると思うけれど、「不思議な偶然が重なり合って、結果悲劇的な運命になる登場人物、でも俯瞰で見ている人達は笑っちゃう」という、不思議なコメディとも取れる作品でした。
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