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軍師の生きざま(アンソロジー:2013) [読書’14]

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「軍師の生きざま」という短編集です。以前に読んだ「軍師に死にざま」と同じシリーズです。前回のシリーズに登場したお馴染みの軍師だけでなく、新たに登場した軍師も居て、面白かったです。「生きざま」というタイトルにはなっていますが、軍師の最期のような部分も描かれていて、驚きでした。あくまでも短編集なので、各作品の感想を載せることはできません。私の印象に残った作品の感想を書いていきたいと思います。

①「異説 晴信初陣記」(新田次郎)
 武団信玄がかつて晴信と呼ばれていた時の初陣がメインとなった話です。と言っても、私はこれが武田信玄だと気づくのはこの作品を読み終えた後だったのですが。
 最近読んできた歴史小説はどれも、戦国、安土桃山時代が中心。特に、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、3大将軍を中心に読んできていました。そのため、武田信玄というと、「敵」というイメージがどうしても強かったです。が、この作品では主役、また彼の若いころが描かれているのでとても新鮮でした。
 新鮮に読むことが出来たもう一つの理由が、作風だと思います。父から新田次郎は気象学者と聞いていましたが、作品内にも天気に関することが色々出てきます。雪の積もり・降り具合から、「忍び」の存在を推測したりする軍師が登場し、まるで探偵みたいでした。「三国志」の軍師、諸葛亮孔明も天候を読むことに長けていたようですが、この話にも天気の話が出てきて、面白かったです。

②「梟雄」(坂口安吾)
 これは斉藤道三に関する作品でした。斎藤道三を初めて知ったのは、司馬遼太郎の「国盗り物語」でした。彼が主人公である作品だったためか、結構彼に思い入れが強くなってしまいました。後ほど、斎藤道三はかなり冷酷な人という評価が世の中でされていると知りました。もちろん、結構冷酷なことをしているなあと思ってはいたのですが、それを含みつつ、別の視点から描いていた「国盗り物語」だったのかなあと最近は思うようになりました。
 そしてこの作品を読むと、やっぱりというか、斎藤道三の冷酷さが全面に押し出されていました。これが一般にある彼のイメージなのかなあと思いました。「国盗り物語」の斎藤道三が私は結構好きなので、この作品を読んでいると、少し複雑な気持ちになってしまいました。

③ 「城井谷崩れ」(海音寺潮五郎)
 これも少し裏切られた感じが強かったので、印象に残っています。黒田官兵衛の話です。私は、黒田官兵衛というと、大河ドラマか「播磨灘物語」の、人の良さそうな、イメージが強いです。 しかし、この作品では、彼の冷酷な部分が描かれていてびっくりしました。後の解説にも、「あくまでも作者による、新たな黒田官兵衛のイメージ」というような説明がしっかり書かれていました。それほど自分が抱いていた彼に対するイメージが崩れる作品でした。ただ、黒田官兵衛が軍師であるため、「作戦を実行するため、私情を入れず、命令を下せる人なのかも」とも思い、このような冷酷な黒田官兵衛も可能性としてはありなのかなあと最後には感じてしまいました。

④ 「真田の蔭武者」(大佛次郎)
 これは、軍師というより、徳川家康のイメージが大きく変わった作品でした。教科書に出てくる写真を見ても、また司馬遼太郎の作品を読んでいても、徳川家康のイメージは、「辛抱強く、慌てない」というものでした。体格も良いので、どっしりと構えているイメージを私は強くもっていました。そんな彼を唯一追い詰めたと言われる、真田幸村の作品。とても緻密で、さすが軍師、と思える人だった気がします。個人的には、この短編集に出てきた軍師の中で一番頭の切れる人物でした。

 読書の秋にぴったりな、ワクワクする短編集でした。
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