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2月9日の投票 その3 [政治]

 さて、この投票翌日のスイスの新聞は投票結果を示す見出しばかりでした。ドイツ語の新聞は読めないので、どういった見出しになっていたのか分かりません。が、(反対票の多かった)フランス語圏の新聞は「黒の日曜日」や「他のスイスを平手打ちにした勝利」、「『Oui』からの教訓」と言った見出しが並んでいました。

 議会も大慌てで、会見の様子なども新聞にたくさん出ていました。大学の政治学部の教授も結果の分析として、記事を載せたりしていました。こういった記事を要約してみると、いくつかのポイントが見えてきました。

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(ポスターの前に並ぶ、新聞各紙。※投票前数週間前の写真です)
①これが直接民主主義
 街にあふれるポスターを見る限り、扇動的な物が多かったです。この議案を提出した党のポスターを見ると「スイスの土地を守るため」といった愛国主義的な表現が多かった気がします。一般市民の人気を獲得するという点のおいて、「成功した」と言える戦略だった、と思います。直接民主主義であるため、どれだけ多くの市民の票を獲得するかがミソ。市民の意見を聞きやすいシステムだと思いますが、こういった扇動的な宣伝に「ながされやすい」というのも特徴の一つかもしれません。

 またこれは個人的な感想ですが、議案名も「大量移民反対」となっていて、いったん投票するとなると、少し分かりづらいです。「『大量移民反対』に反対」と言われると、一瞬「つまりどっちだ?」と思ってしまいます。この名前がどういった由来でつけられたのか分かりませんが、ちょっと分かりづらい名前だと思いました。

②「交渉の余地はあり」が正式表明
 この議案を提案した党(野党)、議会、そして新聞で解説されていたのは「交渉の余地はあり」ということでした。が、現実的にはちょっと難しそうです。

 スイスでは様々な事柄を投票し、日本語で「国民投票」と呼ばれるものにもいくつか種類があります。Initiative(発議)と呼ばれるのが、国民からの提案。一定数の署名を集めると、スイスの憲法に対してInitiativeを出すことが出来ます。このInitiativeに対して、投票が行われるというわけです。国民からの「提案」であるため、投票結果を議会は必ず受け入れなくてはなりません。今回の提案、融通の利く表現も多いとも言われています。が、書かれている内容を実行しなくてはならないのも事実。例えば、今回のInitiativeでは「外交官や国連職員を除く、外国人労働者/入国者に発給する滞在許可証に制限を設ける」となっていました。どういった制限を設けるのか、という具体的な方法、数字は書かれていません。が、「制限を設ける」とはっきり明記しているので、どういった形であれ、議会は制限を設けなくてはなりません。どういった意味で「交渉の余地がある」のか、少し疑問の残るところです。

③さてどうするEU?
 このInitiativeで更に重要なフレーズが「(このInitiativeに関連した)国際条約の見直し」です。「国際条約」と言ってはいますが、もちろん指しているのはEUとの条約です。この決定に慌てたEU加盟国、投票翌日2月10日のフランスの新聞ではこの結果が大きな話題となっていました(次回に続く・・・・)
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