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フランスの試験 その7 [フランスでの学校生活]

 今週末は、フランスの田舎(真ん中、Auvergne地方というところです)から友人がCAPES(Certificat d’aptitude au professorat de l’enseignement du second degré、中等教育教員適正証書)の試験を受験しにパリへやってきました。彼女が受けた科目はSVT(Sciences de la vie et de la Terre)という科目です。日本で言う理科のようなものです。生物、地理学などの理科です(つまり物理、科学を除いたもの)。色々彼女が説明してくれたのですが、何しろフランス人でもよく分からない試験システムなので、全てのことは把握出来てはいません。私の知っている限り、この試験について書いていきたいと思います。

 まずこの試験を受験するには、今のところ修士学位が必要です。「今のところ」と書いたのは、今年から政権が変わり、来年からは学士のみで受験出来るようになるからです。私の友人は学士3年(フランスで学部課程は3年)+2年勉強して、この試験の準備をしてきました(厳密に言うと、今年の夏に修士課程を修了予定)。

 3月には一次試験の筆記試験を受験したようです。他のフランスの試験同様、4時間近い試験をいくつか受け、今週末の口頭試験まで進んできました。口頭試験は2日日程。1日目は試験官との口頭試験(2時間準備、1時間のやりとり)。そして次に「公務員としての試験」。教師も公務員なので、政府との関係など行政的な事に関する知識を聞かれる試験があります(彼女のテーマは「教師の独立性について」だったそうです)。そして2日目は模擬授業。受験者はテーマが与えられた後4時間かけて準備します。40分の授業を自分で作り、20分試験官との質疑応答。面白いことに、この模擬授業、一般の人も視聴可能でした(教室が小さいので、観覧人数は5人と制限されていますが)。なので、私も行って見てきました。地学分野と生物分野に分かれており、前日生物分野に関する試験を受験した彼女、この日は地学分野のテーマが与えられていました。理系コース3年生の地学分野で、テーマは「人類の発達」。日本語で言う、ネアンデルタール人、ジャワ原人という人類の進化を科学的に見ていく、という授業でした。ではどうやって、科学的に見ていくか。頭蓋骨のサイズがどう異なるか(実際頭蓋骨を測るソフトというのがあって、それを使っていた)、また脊髄がどうなっているか、などを含め、彼女は人類の進化を時系列に書いて説明していました。授業内には、実際の頭蓋骨なども出てきてびっくりしました。後から聞いてみると、事前にどういった機材が使えるかというリストが手渡されていて、それを自由に使ってよいとのことでした。

 40分単に授業するだけではないので、大変です。教師からの視点(例えば、「××に関して生徒は混同しやすいので、○○をして対応する」という感じ)も付け加えながら授業をしていかなくてはならないのです。しかし、一番の驚きは授業の構成。パリ政治でも習った、テーマから問題提起の質問を考える、というやり方。2部構成で、各部に2ポイントずつ重要点を入れていっていました。テーマ→問題提起の質問→2部または3部構成→将来的展望・発展、という構成は、フランスの学問ではどこでも応用されているのだ、と強く感じました。

 40分の授業後は3人の試験官からの質問。槍のように鋭い質問がいくつも飛んできていました。こういった答えられないような質問に対して、どう対応するか、というのも見られているのだと思います。私も見ていて、「上手い、かわし方だなあ」と感心してしまいました。

 こうしてあっという間の40分授業は終了しました。後は結果を待つだけ、と思いきや今月末にまた試験があるとのこと。何の試験かと聞いてみると、医学部の口頭試験。よくよく聞いてみると、修士課程中のインターンシップで進路変更をしたようです。9月から医学部の1年生としてスタートし、5年かけて医学部を修了するのだそうです。彼女が勉強してきたことは生物関係も多いので、勉強してきたことが全て無駄になる、ということではないようです。いかにも、勉強好きらしい彼女の進路変更だと思います。

(写真は試験会場の高校)
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