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Crit その2 [フランスでの学校生活]

「イースター休暇」の説明が間に入りましたが、その1から引き続きCritの話を書いていきたいと思います。

 長時間バスに揺られ、やっとのことで着いたAix-en-Province。地方の学校はパリから比べるとこの場所に近いため、既に到着していました。するとバスの中から「もう地方の学校が着いている」と落ち込んだ声が聞こえてきました。パリは遠いから、時間がかかるのはしょうがない、と思っていた私はこの発言の意味がよく分かりませんでした。

 しかしバスから降りると、その理由がよく分かりました。地方学校からの「手厚い」歓迎でした。これは学校だけに限ったことではなく、フランス全体に言えることなのですが、とにかくパリからの人は嫌われています。パリ政治学院、地方出身の人も多いのですが、地方の学校からすると「パリ人」とひとくくりにされます。この大会でもとにかく、パリは嫌われている、ということがよく分かります。黄色と黒がパリのスクールカラーなので、私たちが着くとすぐに地方学校から色々なものが飛んできました。

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 最初は水鉄砲の水、と優しいものだったのですが、それが卵に変わり、スプレー、最後は「パリ臭い」ということで生の魚まで飛んできました。日本のインカレや早慶戦も結構学校対抗の意識が強いと思いますが、ここまでやるかなあと驚いてしまいました(早慶戦は野球しか見に行ったことがありません。早慶戦に関しては、単にそういった「争い」を知らずに学生生活を送っていただけかもしれませんが)。また自分のスクールカラーのスモーク(発煙筒)を使ったり、とにかく混乱していました。私は開いた口がふさがりませんでしたが、周りはかなり楽しんでいました。チームメイトからも「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」と言われてしまいました。

 この手厚い出迎えの後、ようやく競技が開始です。陸上は初日競技がないので、他の競技の応援です。この実際の競技でも、地方対パリの構図は変わりません。トーナメント戦であるハンドボール、バスケットボール、サッカーなど、チームが減っていくにつれて地方対パリの戦いが激しくなります。パリ校、色々な競技が決勝に残ったのですが、アンチパリから完全にアウェーです。

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 写真は男子バレーの決勝ですが、手前がパリ。奥が相手校(ストラスブール)+他の地方校です。男子バレーはパリの実力が完全に上なので、こういったプレッシャーにも負けず優勝してくれました。が、バスケット女子の決勝はシーソーゲーム。最初パリがリードしていたのですが、やはりアウェーのプレッシャーからファールを重ね、チームファールが5つになってしまいました。毎回ファールをする度、相手にフリースローを与えるので、その得点で追いつかれ、最後は1点差で負けてしまいました。パリがフリースローをする時は、すごい騒ぎになっていました。プロの試合だったら、完全に妨害だろう、という感じでした。そういった中でもバレー女子、男子は両チーム3対1という圧勝で、見ていて気持ちよかったです。

 もちろん、パリも地方に押されっぱなしというわけではありません。応援歌の中で、しっかり地方を「バカに」していました。支給されたパリのT-shirtもしっかり地方を皮肉っていました。

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 ダジャレになっているのですが、訳すと「地方よ、パリは許してあげる(=弱すぎても許してあげる)」という意味になります。正しい綴りだと「t’excuse」になるのですが、開催地のAix-en-Province、略すとAix(exと似た発音)にかけて「t’aixcuse」となっているわけです。

 他のスポーツ競技が結果を残している中、2日目から陸上競技が始まりました。主な競技が行われる場所から、陸上グラウンドは離れているため応援団はほとんど来ないだろうと予想されていました。そんな中、どんな結果を残すことが出来たのかは、次回。

Crit その1 [フランスでの学校生活]

いよいよ南フランスで行われる、Crit出発の日。一緒に出発する子達からは、「多分想像しているものと違うから覚悟しておいた方が良いよ」と言われていました。具体的にどういったことが「想像と違う」のか分からず、質問してみましたが、「行けば分かる」との回答のみ。というわけで、このCritというものがどんなものであるかは、出発まで謎に包まれたままでした。

 このイベント、学校は一切関わらないので、学生が全て仕切ります。フランスにはassociationという、日本語に訳すると「組合」とか「組織」、という活動が活発です。 私の通っている学校にも、様々なassociationがあります。私にとって一番身近なのはassociation sportiveです。この団体が、スポーツの授業を色々運営しています。例えばスポーツの授業は、公共の施設を借りるため、「授業料」がかかります。スポーツによって料金は異なるのですが、陸上は毎学期30€支払います。この支払いを統括しているのが、association sportive。またスポーツの授業は医者の健康診断書が必要なのですが、こういった手続きもこの組織がやってくれます。Critの運営も、このassociationがやります。ホテルやバスの手配など。この3日間、主張の強いフランス人をどうやってまとめていくのか私には不思議でなりませんでした。が、出発日にその答えが分かりました。

 答えは簡単。まとめるのは不可能。まとめることを目標とせず、とりあえず物事が進めば良い、という考え方のようです。そのため、何をするのにも時間がかかります。私は呆れる、というより感心してしまいました。

 目的地に向けて出発するバスに乗るのも一苦労。選手だけでなく、「サポーター」という一般学生(Critを見に行きたい人)も連れて行きます。そのため、パリから出発するバスは4台。一応各種目ごとにバスが振り分けられているのですが(例えば、サッカー女子、ハンドボール男子のバス、というように)、時には数席余ってしまうことがあります。1席も無駄にしないためにも、参加人数の少ない個人種目は参加メンバーを別々のバスに乗せる、ということも出てきます。この「個人種目」には陸上も含まれています(「たったの」15人。ラグビーは補強も含めて40人近い選手を連れて行きます)。混乱を防ぐため、席の交換は厳禁なのですが、そんな約束を聞くフランス人ではありません。うちのキャプテンは、色々なスポーツチームと直に交渉。が、権限を持つassociation sportiveによい知り合いが居る訳でもないので、その交渉は難航。やっぱり人生でうまくやっていくにはコネが大切なのだな、と強く実感しました。結局、交渉は上手くいかず、陸上参加者は別々のバスに乗ることになりました。11人がバスC、4人がバスA。バスAはハンドボール男子(うるさいことで有名)、ラグビー女子のバス。抽選の結果は、私は他の3人の選手とバスAへ。出発予定時刻より2時間遅れで、11時間のバス旅行が始まりました。

 団体でバスに乗るのは、高校の時のスキーの授業以来。中学の頃は、バス全体でゲームをしたりして盛り上がっていたと記憶しているのですが、高校の時は結構バラバラでした。フランスの団体バス旅行は一体どんなものか?想像していたとおり、音楽を大音量でかけてディスコ化していました。とにかく元気でした。

 朝6時30分。ようやくAix-en-Provenceに到着。暖かいと思っていたら、朝はかなり冷え込んでいました。バスが駐車場に到着すると、早速みんな着替え。何に着替えるのかと思いきや、チームカラーの洋服に着替えていました。各学校チームカラーがあるようで、パリ校は黄色と黒。阪神タイガーズのように目立つ、と思ったのですが、他校も同じように目立つ色でした。Toulouse校は(ショッキング)ピンク、Aix-en-Provence校が赤と黄色など。
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 グルノーブル校やリヨン校などAix-en-Provenceに近い地方校は、既に到着していました。そして、私たちは彼らの手厚い歓迎を受けたのでした。この話は次回。

Crit準備 [フランスでの学校生活]

 以前、取っている授業紹介で陸上の話を書きました。そこで学校対抗の大会、Critに出るという話をしました。先日、その大会に向けての全体練習がありました。この大会、陸上だけでなく、ハンドボール、ラグビー、サッカー、バスケット、テニスなど他の競技もあります。私が通っている学校はパリのど真ん中にあって、スポーツの授業は一般施設を借りて行うことになっています。しかし今回は複数のスポーツが同時に練習をするということで、総合運動場のようなところで練習をしました。

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 パリ郊外にある総合競技場のようなところで練習をするのかと思いきや、Polytechniqueという学校のスポーツ施設を貸してもらいました。400mトラック、ラグビー場、プール、道場(合気道、柔道、と分かれていた)、体育館、テニスコート(少なくとも3面はあった)とかなり施設が充実しているのでスポーツ施設かと間違えてしまうほどでした。しかしこの学校、フランスの超エリート校。ナポレオンが学生を軍の支配に置くため、設置したのがこの学校。軍人養成校だったようですが、今は理工学が発達した学校です。エリート養成校という感じで、学生は学費が無料、それどころか初年度から給料がもらえます(1年生は年800ユーロ)。有名人で言えば、ジスカールデスタン元大統領、日産の社長、カルロス・ゴーンがここの出身です。ゴーン社長はこんなところで、勉強していたのか、と思いながら、陸上の練習をしてきました。

 軍人をトレーニングするためなのか、学校は丘の上にありました。最寄りの駅から、とにかく坂道を登ります。この坂道を登るだけでよい運動になりました。構内はかなり広いので、400mトラックへ行くのにも時間がかかりました。中学の陸上競技大会以来の400mトラック、思っていた以上に大きかったです。Critに参加する学生全員集合というわけにはいきませんでした。陸上の練習では見たことがない人も居て、よい顔合わせでした。男女100m、400m、1500m、男女混合400mリレーの種目があり、そのほかに3km走があります。3km走は全員参加なので、この日は長距離の練習。とても疲れました。この練習後、ようやく出場する種目が発表されました。私は長距離のみ。大会が、どんな感じになるのか楽しみです。
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Athlétisme [フランスでの学校生活]

 前学期に引き続き、陸上の授業を取っています。前学期からの知り合いもほとんどこの授業を取っているので、知っている顔が多いです。新学期から約1ヶ月経ちましたが、最初の数週間はほとんど練習が出来ませんでした。なぜなら、ヨーロッパをおそった寒波のおかげです。

 毎週土曜9時から3時間ほど練習をするのですが、寒波の間は、1時間ランニングをして終了。寒すぎて風邪をひいたら大変、というのと、使っているトラックが凍って、練習できないという理由からでした。更に朝9時、しかも週末、ベッドから出てきて練習に来る学生自体少なかったです。集まっても10人がよいところでした。私は(寒がりですが)北海道から来ているので、今のところ皆勤です。

 そして、先週からようやく本格的な練習が少しずつ始まりました。数週間練習しないだけで、こんなにもきついのか、という感じでしたが。土曜以外にも、有志で集まって水曜の夜に15キロ走っています。森の中のようなところを走るので、ちょっとしたスリルがあります。街灯があまりないので、闇の中を走る感じです。最近ではコースが頭に入ってきたので、どこらへんに大きな木の根があるのか把握出来てきたので、ずいぶんと走りやすくなりました。しかし、一緒に走る人達はみな持久力があるので、相変わらず「こんな暗闇の中で置いてきぼりにされたらどうしよう」という心配をしながら走っていますが。

 前学期はよく分からないままいきなり大会に出て(大会出場の申し込みをしたのが、大会の1週間前)、よく分からないまま終わったのですが、今学期は事前に知らされています。Crit(Critériumの略、フランス語で「選抜競技」という意味です)という大会に参加する予定です。4月最初の週末に行われるので、準備期間は後1ヶ月ということになります。この大会、まだ全貌がよく見えていないのですが、個人的にはインカレとか東京6大学のようなものだと思っています。

 私が今留学しているところは「パリ政治学院」と呼ばれていますが、フランスにはこの「政治学院」と呼ばれているところが他にも8つあります。リヨン、ボルドーなどフランスの都市にあります。毎年春になると、この9つの政治学院の間でスポーツ大会を行うというわけです。会場は持ち回りで、去年はパリで行われたようです。そして今年はAix-en-Provence(エクス・アン・プロヴァンス、マルセイユがある県)で行われます。陸上以外にも、バスケットボールやサッカーなどの競技も行われるようです。移動はもちろんバス。パリから12時間かかるようなので、相当な長旅になりそうです。遠いところに行ける、と喜んでいた私ですが、チームとしては色々苦労があるようです。バスだと連れて行くことが出来る選手の数も限られてしまいます。チーム競技、例えばサッカーは最低でも11人、補強なども連れて行くと自ずと20人近い人数になります。こういったチーム競技は人数を削れない、ということで、人数を削れるところから削ろう、ということになります。例えば陸上です。100m、400m、800m/1500m、リレー、長距離(女子は3kmちょっと)が種目としてあるのですが、理想としては各種目に選手を送り込むことだと思います。しかし、人数の制限があるため、全員出場する必要がある長距離を走れる選手のみを連れて行くことになりました。結局男女、各7人ずつということになりました。私も一応長距離が走れるということで、なんとかその7人に入ることが出来ました。長距離以外、どの種目に出るかまだ決まっていないので、少しドキドキしているところです。

A la Découverte de l'Opéra [フランスでの学校生活]

 せっかくパリに居るのだから、と取った授業です。「オペラを発見するために」という授業名です。やはり、オペラを教養として知っておくべきかな、と思い取ってみました。実際教授も、オペラを教養知識として持っていると何かと役に立つ、と最初の授業で言っていました。

 とにかく初めて学ぶことばかりです。歴史、声など基本について勉強していますが、思っていた以上に深いです。オペラは、演劇でもあり、音楽でもあり、様々な芸術の要素が入っている、と教授が言っていましたが、まさにその通り!

 プレゼンテーションなど、他の授業同様に課題があるのですが、この授業だけのユニークな課題もあります。それはオペラのリハーサルを見て、短い評論を書くというもの。オペラ自体見たことがない私は、リハーサルを見ると聞いただけでもワクワクしてしまいました。

 リハーサルと言っても、たくさんの人が来ていました。公開を数日後に控えているオペラなので、いちいち止めて細かい修正をするのではなく、通しでやるリハーサルでした。役者は実際に衣装を着てやっていたので、本番とどこが違うのだろうか、と思ってしまいました。が、違うことが一つ。ステージの下に居るオーケストラたちは私服でした。色の違う洋服を着ると、こんなにも目立つのか、というぐらい、私服だ、ということがはっきり分かりました。私は2階席だったのですが、そこからでもはっきりと私服だということを認識できました。本番ではみな、目立たないように黒い服を着るのだと思いますが。

 今回見た作品は「ペレアスとメリザンド」でした。原作を知らないので、あらすじをチェックして、かつ家系図まで作っておきました(色々名前が出てきて混乱しそうだったので)。オペラ、というと悲劇をイメージしてしまう私ですが、イメージ通り悲劇でした。ソプラノとテノール、というように、声のコントラストもあって良かったです。しかし、小道具が少し不足気味、という印象を受けました。全てを演技や歌で表現するのには少し無理な部分というのがあるのですが、そういった部分で小道具がなかったので、少し分かりづらかったです。

 私がこのオペラのテーマだと感じているコントラストは、上手く表現されていました。ソプラノ、テノールという声のコントラストだけでなく、衣装(黒、白)、世代(孫と祖父)などなど。そして、悲劇に典型的な憎しみと愛も、しっかり描かれていました。

 来月には、私のプレゼンテーションが回って来ます。ほとんど知らないオペラがテーマとなっている中で、唯一知っている「カルメン」がテーマです。元になった本は読んだ(NHKラジオ講座で)ことがあるのですが、オペラは見たことがありません。どのように原作がオペラの作品となっているのか、見るのが楽しみです。

Photographier le politique [フランスでの学校生活]

 この授業も、選挙関係です。「政治の写真を撮る」という授業です。最終的な課題は、自分で選挙に関係したテーマを設定し、そのテーマに沿って5枚の写真を提出するというものです。これは授業外での活動になるので、実際の授業では過去の選挙戦を写真、映像という観点から見ていっています。毎週学生一人が、「今週の写真」と題して、新聞や雑誌から大統領選候補者の写真を選び、分析発表することから始まります。通常は、カメラマンがたくさんの写真を選び、記事の作者(編集者)が膨大な量の写真から、記事に合った写真を選ぶようです。常に演出があるようですが、本当によく選んでいるな、と思う写真が何度かあります。

 実際にカメラマンと活躍している人が先生として授業を行ってくれます。そのため、カメラの使い方(光のとらえ方など)、テクニックなども教えてくれます。それ以上に私が気に入っているのは、数週間に1度行われるグループプレゼンテーション。第五共和政が始まって以降の大統領選挙を、写真から見ていくというものです。日本同様、各候補自分のポスターを作ります。そのポスター、スローガンからどんな言葉が読み取れるのか、というプレゼンテーションをやってくれます。私は過去の大統領選(2006年を除いて)について、あまりよく知らないので勉強になります。ポスターがほとんどの宣伝に使われていたけれど、テレビを通してメッセージを伝えた候補も居ました。どの候補も、今の候補に比べてかなりゆっくり話していました。優雅な感じがしましたが、これはどの国を比べても言えることではないかと思います。情報量が多くなった分、人は速く話すようになった気がします。

 さて、私のグループプレゼンテーションは2007年の選挙戦です。自分がフランスに居た時に行われ、実際に選挙戦を垣間見ることが出来たので、少しはやりやすいかな、と思っています。

 そして、最終課題のテーマも決まりました。「大統領選挙中、決して表に出ない人達」というテーマです。候補や(時には)選挙参謀は、メディアの前に出てきますが、それ以外にも前に出ない人というのは居ます。例えば、政治集会の会場で働く人達。語られることのない人達だけれど、居なくてはならない人達の写真を撮ってみたいなあと思っています。ちなみに、クラス内で一番多かったテーマは「候補者のポスター」。街の至る所にポスターがありますが、破られたり、落書きされたりしているものもあります。その経過を追う人も居れば、どのように貼られているのかを撮影していきたい、という人も居ました。学期最後の授業で、どんな作品が発表されるのか楽しみです。

Le printemps 2012 [フランスでの学校生活]

 引き続き、今学期取っている授業を紹介してきます。

 科目名は「2012年、春」という少し分かりづらいタイトルです。しかしフランス人であれば、すぐにピンと来ます。今年の4月22日と5月6日に行われるフランス大統領選挙のことを指しています。4月22日の投票で過半数を得た候補が当選、どの候補も過半数に達しなかった場合は5月6日に決選投票が行われます。私は偶然にも前回の2006年大統領選にもフランスに居ることが出来たので、フランス人の選挙にかける熱は1度見ていました。田舎に居たこともあって、得票率は90%を超え、市役所で行われた票数計算を見ることも出来ました。そして今回は首都で選挙を見届けることが出来そうなので、楽しみです。また私の通う学校はほとんどの大統領候補そして過去の大統領を輩出しているところなので、選挙数ヶ月前から結構盛り上がっています。実際、政治活動に参加している人も多いです。

 Libérationという左の新聞が、この学校で多く読まれていることを考え、左翼の人が多いのかと思いきや、現職の大統領を支持する人も多く面白いです。これだけ、考えが異なる人が多いため、政策に関する授業をやったら、収拾がつかなくなる気がします。そのため、この授業はあくまで選挙について。数学学者と社会学の教授二人が、「フランスの政治経済研究所」というところから来て、授業をしてくれます。研究所と言っても、世論調査の分析をしているところです。フランス人はやたらと世論調査が好きで、sondageに関する詳しい法律まであるほどです。例えば、世論調査は投票者の意思に大きな影響を与える(つまり民主的ではない)、ということで、投票日前日は世論調査の結果発表が禁止になっているようです。

 世論調査=数字、と苦手な数学や統計の授業を思い出してしまった私ですが、世論調査は深い!他の授業同様、毎授業テーマがあって、そのテーマに関するプレゼンを学生が行い、教授がコメントする、という形です。最初のプレゼンテーションは「世論調査からパターンが見えてくるか?」というテーマでした。地域や性別、年齢によって、投票する候補に差が出るか、という話でした。今ではその傾向も少なくなってきているようですが、無視できるような要素ではない、ということでした。例えば、現大統領は高齢の人(特に女性)からの支持を多く得て当選したようでした。数字を元に、こういったことを予測出来るのだなあと関心してしまいました。そういえば私の好きなアメリカドラマ「ザ・ホワイトハウス」もよく世論調査の話題、分析が取り上げられていました。数字をどう読むか、というのが選挙の鍵を握る、というのに、国籍は関係ないようです。

 そして先週、私もプレゼンテーションを終えました。テーマは「政治における信頼度」。政治における信頼は、一筋縄に計れるものではなく、「一般的な支持」(=民主主義における信頼、愛国心など)から「特定の支持」(=党における信頼、今の政府に対する信頼)など色々なレベルがある、という政治学者の考えがプレゼンテーションの大きなテーマ。言われてみれば、愛国心はあっても今の政治形態を支持出来ないから投票しない、という論理が成り立つもこの信頼レベルの幅があるからだと思います。このプレゼンでも、過去3年の世論調査を見ながら、グラフを作ったり、数字漬けの日でした。久しぶりにExcelとも格闘しました。この調査を見て分かったのは、「フランス人の現政府に対する不信感は大きくなっているけれど、決して投票を棄権するという行為に大きく繋がるほどではない」、そして「今の政治には満足していないけれど、自分の生活にはある程度満足している」という悲観的でもあり、選挙になると希望を持たずに居られない、というフランス人像が見えてきます。フランス人の政治不信が増えている(例えば、投票率が低かったと言われている2002年の大統領選でも得票率は70%)、とメディアでも話題になっているのですが、実際の数字を見てみると、この不信は本物か?と疑問になります。

 またこの世論調査を見て、質問も面白いと思いました。アメリカだとイメージが先行して、「○○候補はアメリカのリーダーになり得るか?」や「○○候補はアメリカのリーダーとしてふさわしいか?」というリーダーのイメージに質問が多い気がします。が、私が今回見た世論調査の質問は「どの候補のどこに期待するか?」、「次の日曜に投票が行われるとしたら、誰に投票するか?」という質問がフランスでは多いです。

 プレゼンテーション以外に、日常的に行う課題がこの授業ではあります。それはいくつかのグループに分かれて、各候補の選挙戦を追う、という課題です。毎回の授業でどんな動きがあったのか、まとめて発表していきます。世論調査でトップを走るオランド候補や現職のサルコジ大統領を追いたい、という人が多かったです。自ずと、こういった党を実際に支援する活動をしているフランス人が優先的に人気候補を選ぶことが出来ます。私は他の外国人留学生と一緒に極右候補の動きを追うことになりました。初代党首のお父さんから党首の座を引き継いだマリーヌ・ペン、という候補です。外国人排斥を全面に出していたお父さんの代からのイメージ転身を図っていて、世論調査でも3番手につけていて、侮れない候補です。教授達からは各候補の市民集会へ行くように言われているので、彼女がパリで集会をやる日を待っています。自分と正反対の意見を持つ人の話を聞くのも面白い経験になるかな、と思っています。

 最後に、この授業を取って面白い点がもう1つ。ホームステイという形でフランスに滞在しているのですが、この家の主であるおばあちゃん、同じアパートの上に住む孫(20代)の選挙に対する意見も様々。この意見が、授業で見た世論調査の結果が反映されていて、興味深いです。

History of European Migrations, 19th-20th Century [フランスでの学校生活]

 今学期取っている授業紹介の続きです。

 この授業は「ヨーロッパにおける19〜20世紀の移民の歴史」という授業です。前回紹介した授業同様、歴史の授業です。が、こちらは「移民」ともっとテーマが狭まっているので、授業の進め方は少し違った印象を受けます。典型的な(こちらの)歴史の授業とは異なり、その年代に何があった、そしてどんな解釈が出来るか、という授業の進め方ではありません。ある時代をとりあげるというより、ある一定の移民を取り上げて(フランスの20世紀後期の移民問題、女性の移民の歴史)、その歴史について勉強していくという感じです。

 毎回の授業で2つリーディングが課されています。授業内では学生一人がそのリーディングについてプレゼンテーションをし、その後他の学生がコメントをし、最後に先生がまとめ(または補足説明)という至ってシンプルな方法で授業が進められていきます。

 今は、フランスの移民問題(政策の歴史)についてやっているのですが、現代でも話題になっていることが出てくるので、面白いです。

 前回の授業ではフランスにやってくる移民とアメリカに行く移民の歴史に対する態度の違い(少し一般化しすぎですが)が取り上げられました。色々違いがあるのですが、私が大きな違いだと考えているのは同化の度合いです。フランスでは、国税調査で人種を聞かれることはありません(アメリカでは日本系アメリカ人、フランス系アメリカ人など自分の人種についての問いがあるようです)。なぜなら、自分の祖先がどこから来ていようとフランス人なことに変わりはない(同化されるべき)、という考えがあるからです。そのため、移民の歴史と言っても、人種を特定する文化がないため「フランスの歴史」とざっくり捉えられてしまうのです。これこそが、フランスで中華街を見かけない理由かな、と思っています。もちろんパリには中国人(アジア系)が多く住む地区というのがあります。そこにはアジアンスーパーや中華レストランがあったりします。しかし、横浜やサンフランシスコの中華街で見かけたような大きな「門」、外とその中華街を区切るものはありません。これはフランスの人種や文化を特定しない文化から来ているのかな、と思います。

 祖先がどこから来ていても、フランス人には変わりがない、と聞くと少し寛容的な印象を受けます(自分の出身によって、評価しないという点において)。しかし1つ例外があって、フランス語を話せないとフランス人の態度は大幅に変わります。外国人がフランス国籍を取得するときも、フランス語のテストを受けさせられるようです。フランス語を話せない人は、観光客であっても容赦しません。観光客がフランス人に対して持つ印象の一つに 「フランス人は英語を話さない(話せない)」というものがあります。確かに話せない人も多く居ますが、これはフランス語を誇りに思っているということも関係しているのではないかと私は思います。 しかし、どんなに遠い国(例えば日本)から来ていても、フランス語を話せばとても好意的な印象を持ってくれます。私はこちらに来て、こういった経験を何度もしました。単にフランス語を話すだけで、こんなに態度が変わるものなのか、と最初は驚いてしまいました。

 そして最近では、フランス国籍を取得するために、新たなテストを受けることが義務づけられました。それはフランス、またはヨーロッパに関する一般常識テスト。3択問題で、ほとんどがフランスを語る上で欠かせない一般常識です。例えば、「凱旋門に関係しているのは?①ナポレオン、②ド・ゴール(将軍)、③カエサル?」といった歴史問題から、「ブリジット・バルドーは、①映画女優、②高級裁縫店のデザイナー、③フランス初の女性ボクサーチャンピオン、だった」という文化問題までがあります。こういった最低限のフランス、ヨーロッパにおける背景知識がないとフランス社会に同化(intégrer)できない、というわけです。

 歴史という過去を学んでいても、まだまだ問題だらけの移民問題。だからこそ、歴史の、ある1点を学んでも、今と関連づけることが出来て面白いです。

Histoire des Relations Internationales 1870-2010 [フランスでの学校生活]

 1月下旬から春学期が始まりました。学期制なので、先学期とは全く異なる授業をとります。学期開始から何週間か経ち、どういったことを勉強していく(している)のかということが各授業で見えてきたので、私が取っている科目について紹介していきたいと思います。

 最初は「国際関係の歴史 1870-2010」という講義授業です。日本で自分が所属する学部はアジア人が多いため、自国の歴史(特に第一次、二次世界大戦中)について知らざるを得ない状況に置かれました。もっと歴史について知らなくてはならない、と歴史の授業もいくつか取りました。しかしそれは基本的に日本が中心の歴史でした。

 日本同様、歴史が長い国、フランス。歴史を重要視していることがよく分かります。どの授業もほとんど歴史とリンクさせて話をしていきます。そういった国に居ると、「しっかり歴史を勉強しないといけないな」という気分によくなります。

 そんなことを強く思った先学期を終え、今学期は歴史の授業を選択しました。国際関係、と言っても視点はフランス。自ずとヨーロッパ中心の歴史になります。今は第一次世界大戦後のヨーロッパについてやっているのですが、日本が日清戦争、日露戦争をやっている間、ヨーロッパでは色々複雑なことが起こっていたのだなということがよく分かります。もちろん、日本の世界史の授業で習ったことも多いですが、改めてヨーロッパが中心だったということを感じさせられます。

 他の講義授業同様、週1の2時間講義、週1の少人数クラス(2時間)というカリキュラムが組まれています。少人数クラスでは、毎回2人の学生がプレゼンをするという進め方をしていきます。歴史は過去だから変えられない、と言いますが、解釈は色々することが出来ます。最低限の年号や何が起こったかというのは、知識として持っていることを求められますが、プレゼンテーションで求められるのはどう解釈するか、ということです。私も早速先週プレゼンテーションをやったのですが、テーマは「ロカルノ条約:ベルサイユ条約(体制)の見直しであるか?」でした。斜に構えるのが好きな(というより、遺伝子の中にそういった性格が組み込まれていると私は考えています)フランス人、テーマも「間違っている」という前提で取り組みます。このテーマでプレゼンテーションをする時も「ロカルノ条約はベルサイユ体制の見直しであった」という流れで進めていってはいけません。このテーマのどこに「問題」があるのかを発展させていくことが求められます。私は結局、「ロカルノ条約はベルサイユ(条約)体制と似ている部分が多い。平和を目指したが、結果的に第二次世界大戦を招いてしまった。しかし、第一次世界大戦時敗戦国だったドイツをロカルノ条約交渉時には参加させた。これはベルサイユ会議にはドイツの参加を認めなかった頃と比較すると、大きな変化である。ロカルノ条約後、ヒットラーの台頭で第二次世界大戦が始まるにせよ、ヨーロッパの安定、平和をもたらせようとした試みはベルサイユ体制と異なる」という結論にしました。結果的にあまり変化はなかった(世界大戦を招いてしまったため)にせよ、プロセスはベルサイユ体制と異なっていた、という形でテーマに疑いをかける形にしました。ある留学生がが「妥協点をどこに置くか」という言葉を使ってこの作業を表現していましたが、まさにその通りだと思います。

 今まで習ったことのない形で歴史を勉強することになっていますが、色々な見方をすることが出来て面白いです。ただヨーロッパ中心の歴史なので、補足知識が必要になることがありますが。

大会 [フランスでの学校生活]

日程:11月6日(日)、14時30分〜
場所:Bois de Boulogne
距離:6km
結果:30分28秒、全体(男女混合)35位、女子3位
チーム結果:優勝(3チームぐらいしか居なかったけど)

11月の始め、陸上の大会に出場しました。フランスの大会システムは日本とかなり違うので、今でも何のための大会だったのかよく分からないのですが、自分が分かる範囲で説明してみようと思います。

 まず、効率性を考えて、色々な選考を兼ねて一つの大会として、行っています。私たち学生は午後に走ったのですが、午前中は子供の部。記録会のようなものを兼ねてやっていたようです。午後は、学生を含む大人の大会。個人で参加することもできるので、「自分との戦い」のために来ている人もいました。私たち学生は、学校対抗。この日が県大会でした。ちなみに日本で言う「県大会」ほどのレベルではありません。フランスには90以上の県があるので、各県の規模はかなり小さいです。日本で言う「県大会」のレベルはこちらの地域(région)大会と同じのような気がします。

 そのため、私たちの学校を含め、学校対抗に出場していたのは2校のみ。Polytechというエンジニアの大学(エリート校です)との一騎打ちでした。(もちろん)私たちの学校が勝利!男子が1、3、5、6位の入賞者を出し、女子も2、3位の入賞者が居たので、なかなか良かったのではないでしょうか。

 ではこの大会、どんな場所で行われたのか。陸上の大会、というと競技場を想像しますが、それとは全く異なるものでした。 なぜなら森の中を走ったからです!イメージで近いのは、「クロスカントリー/陸上版」かな。走った距離はそれほど長くはないのですが、コースの状態は良いと言える物ではありません。まず、森の中なので、木がたくさんあり、根につまずかないように走らなくてはなりませんでした。落ち葉もたくさんあり、滑りそうになったり、でこぼこ道で穴にちょうどつま先が入ったりなどトラブルはつきませんでした。それでも、女子の中で3位だったのでまあまあかなと思っています(また週2回しか練習していないことを考えると)。

 自分一番のトラブルは、ゴールが分からなかった点ではないでしょうか。曲がりくねった森の中を走るので、誘導員のような人が各ポイントに居ます。誘導員以外にも、ところどころアルファベットの紙が貼ってあります。この紙を見て、自分がどこら辺に居るのか推測出来るというわけです。もちろん、森をよく知っている人はですが。コースは3キロで、そこを2周。1周目は問題なく通過したのですが、2周目に入って、私はアルファベットがどこまで続いているのか忘れてしまいました!確かPまであって、その後すぐゴールだと信じ込んでいました。しかし、Pのサインの前を通過しても、ゴールは見えず(結局Rまででした)、どっと疲れが出てしまいました。ゴールの見えない競走というのは、精神的にかなりきついもので、「いつになったら終わるのだろう」とずっと考えていました。ゴールが見えたときは、本当に安心しました。男女混合で走るため(もちろん順位は別々に出されますが)、たくさんの人に抜かれた気がしました。しかし、終わってみるとかなり高順位だったので驚きでした。

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 写真は大会終了後です。何人かの人が首や頭に巻いているのは、景品(大会に色々なスポンサーがついているので)でもらった「○○ウォーマー」です。○○の部分には、体のどの部分も入れることが出来ます(つまりどこに巻いても良いということです)。レッグ、ネックなどなど。
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 この○○ウォーマー以外に、キーホルダーと参加メダルももらいました。

 これからも色々大会があるようなので、楽しみです。
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