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The Remains of the Day (by Kazuo Ishiguro : 1989) [読書’15]

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 名前は日本っぽいですが、イギリス作家です。読んだイギリス作家の数は少ないですが、私の好きなイギリス人作家かもしれません。彼の作品の特徴は、「記憶」です。現代だったり、戦後だったり、日本だったり、イギリスだったり、舞台や時代背景は作品ごとに異なります。しかし、必ず「記憶」が話の中心になっています。記憶のぼやけた感じが、少しイギリスのどんよりした天気を私には思い出させます。

 イギリスの歴史ある館で、執事を務める男性の話です。貴族、執事、という、完全なイギリスのイメージが、読者を裏切ることなく描かれています。「dignity」、日本語にどう訳すか難しいところですが、「品格」や「尊厳」という意味が辞書には出ています。仕事の品格、というのが、この本のテーマの一つです。仕事や自分のやっている事の意味を考えると、これはとても重要なテーマな気がします。特に、自分の仕事や人生をよく考えていた時期に読んだので、主人公である執事の話にはグッときました。読んでいても、「私にとって品格とは?」など考えてしまいました。

 そして、この本でよく登場する言葉が「gentleman」。執事を表すのにぴったりの言葉ではないでしょうか。同時に、定義が難しい言葉です。私がgentlemanだなあと思える人を何度か見かけたことがありますが、共通項は見つからず、まだ定義出来ていません。

 また、第一次大戦後のイギリスから見たヨーロッパも描かれていて、とても面白かったです。当時(そして今も)、イギリス人からすると、フランス人は変わった人だったようです。特質というか、理解出来ない人達、という感じだったようです。私達からすると、「ヨーロッパ」と一括りにしてしまいますが、ドーバー海峡(フランス語では「カレ海峡」)は大きな隔たりなのでしょう。

 少し時間がかかりましたが、飽きることなく読み終えることができました。この本を読むまで、個人的には、彼の作品では「Never let me go(私を離さないで)」が好きでした。私が「Kazuo Ishiguroが好きだ」という話をすると、皆「The Remains of the Day(日の名残り)が良い!」と口を揃えて言います。ずっと気になっていて、読みたいと思っていました。そして、同じような話をイギリスの友人にしたところ、彼女がその本を貸してくれました。ちなみに、この会話は数年前のこと。彼女は、以前我が家にホームステイしていたイギリス人。私がロンドンへ遊びに行った時、8年ぶりの再会を果たし、その時に彼女が「次会うときまで貸してあげる」と言ってくれたのです。その時から、早3年が経ってしまいました。ようやく読み終えたので、早く返さなくてはならないのですが、いつになることやら。
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コメント 2

tommy88

「gentleman」と言えばオレだね。
すぐに思い浮かべることが出来る。
そうかい、あのデラシネ【déraciné】のような根無し草娘か。
名前は忘れたがベジタリアンだった。
エミリ-と奇跡的に思い出した。「縁」だったね。
by tommy88 (2015-05-28 11:09) 

次女

えー、すごい!
by 次女 (2015-05-30 21:47) 

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