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2014年の終わりに [読書’14]

 今年も残りわずか。毎年毎年言っていますが、1年あっという間でした。前半をジュネーブで過ごし、夏に帰国し、居候する場所を変更したせいか、スイスに居た時間を遙か彼方に感じます。本当に今年ジュネーブに居たのか、とずいぶん昔に感じてしまうこともあります。色々なことがあって、周囲の人にお世話になった年だと痛感します。

 夏を基準に時間がぷっつり分断されている気がしてしまいますが、共通していることもあります。それは読書です。学部時代にも本は読んでいましたが、フランス語の本はたまにしか読んでいませんでした。しかし、ジュネーブで読書好きのホストファミリーに恵まれ、フランス語の本を読む回数が増えてきました。帰国しても読み続けてはいますが、やはり日本語の本を手にする機会が今では圧倒的に多いです。

 言葉は変わっても、読書は続けています。書籍関連の雑誌は読まないので、どんな本を読もうかというのは、毎回迷っています。とりあえず、周りの人が勧めてくれたものを読んだりしています(フランス語でも日本語でも)。そのため、今後の目標は、人に紹介出来るような(隠れた)名作を見つけ出すことです。

 そこで、今回は、年末ということで、 今年読んだ本をランキングにしてみました。順位付け、というよりは、私が読んだ中で気に入った本3冊、というところでしょうか。今年は、日本語の本も多く読んだので、カテゴリ分けをしてみました。

海外部門
 英語の本も読んだのですが、今回ランクインしたのはフランス語の本のみでした。
1.Au revoir là-haut
 長い本を読み切った、というだけでなく、「生き残り宣告」のような、戦争で生き残った人の苦しみがよく分かる作品でした。第一次世界大戦後のフランスがどんな様子だったか、また国をだます、というサスペンス的な要素も良かった作品でした。長さが気にならないほど、どんどん読み進めることが出来た作品。
 最近になって、同じ小説家が書いた推理小説が日本で有名になってきました。私はこの推理小説の裏表紙に書いてあるあらすじしか読んだことがありません。しかし個人的に「Au revoir là-haut」の方が勉強になりそうな気がして、翻訳されていないのが驚きでした。

2.HHhH
 この作品も、最初に紹介した作品同様、大戦中の話。こちらは第二次世界大戦です。ストーリー自体もハラハラして面白いのですが、「歴史」とは何か、「歴史小説家」とは何かを考えさせられます。ナチス幹部暗殺を、フランス人が淡々と描いていくという背景も、とても興味深いです。暗殺計画と著者の苦悩が並行して描かれているのですが、苦悩部分で登場する女性(多分著者の恋人)の名前が毎回変わる部分もフランス人らしい、と笑ってしまいました。

3.La Peste (by Albert Camus : 1947)
 この本は、ブログで感想を紹介出来ませんでした。読み終えてから相当時間が経ってしまったからです。彼の作品を3冊読みましたが、この「La Peste(ペスト)」が一番好きです。「異邦人」は、「不条理」という概念を理解出来ず、あまり面白いと思いませんでした。読んだ後、フランス人の友人やスイスのホストマザーが説明してもらい、ようやく作品の深さを理解したという感じです。説明を聞いた後で、少し作品のイメージは変わったのですが、それでもこの「ペスト」がずば抜けて好きです。
 各登場人物の心理を淡々と描いています。シンプルな文体で書かれていますが、その文章は人間の心理を考えさせられます。病気に対する人間の反応と無力さが主に描かれています。エボラ出血熱の一連の動きを見ていると、この小説と共通するものがあり、なぜカミュの作品が名作と言われるのか、分かる気がします。しかし、この小説は「ペスト」という単なる病気に留まらず、社会にある様々な異物に対する反応という風にも置き換えられ、読んでいて色々なシチュエーションを考えてしまいました。「Absurdité(不条理)」という概念を説明してもらった後に読んだ作品だったので、「まさに社会には不条理で溢れている」と思ってしまいました。

 2014年もこのブログを読んでくださり、ありがとうございました!2014年の読書総まとめは、明日も続きます。引き続き、新年もよろしくお願いします。
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tommy88

吉行淳之介は全て読んだ。ある時期までに書かれた片岡義男は全て読んだし、五木寛之もそうだ、村上龍のエッセイ、評論も全て読んでいる。松本清張も主立ったものは全て読んだし、坂口安吾は、小説がどうもふるわなくて5つほどの作品以外は全て挫折しながらも、彼の評論には鋭いものを感じ、評論だけは読みあさった。結局は卒論対象となった作家だし、生涯をかけて読もうと全集を手に入れている。失恋するたびに恋愛論を読み、畑富子への失意から畑正憲を読んだ時は、寄港した横浜で三越の書店にて、棚にあった作品を全部買って航海中に読みあさった。司馬遼太郎も面白く読みまくった。畑正憲を再読することはない。しかしそれ以外の作品たちは再読もあり得る。現在、読みあさっている東野圭吾に再読はあり得ない。そして、離れる時期も近づいてきたかもしれないし、移動の暇つぶしには暫く読み続けるのかもしれない。私には指南役の上迷がいて、だから彼とつきあっていた期間には、良いものを多く読んでいたのだと思う。
掘り出し物的オススメ作品は、開高健『日本三文オペラ』、坂口安吾『桜の森の満開の下』(これはインターネット青空文庫で無料で読める)。東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇跡』もオススメに入る。あまり重いものは勧めない。
短編小説研究としては、芥川龍之介『羅生門』と横光利一『蠅』が私にとっての珠玉の作品だな。
ものすごい勢いで読みまくる姿勢は正しくて、三女のあのスピードがあればと羨ましく思うが、彼女はあまり読んでいないのかな、よくわからない。
by tommy88 (2015-01-01 06:54) 

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