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Le vent se lève(風立ちぬ)を見て:ホストファミリーとの会話から [外から見た日本]

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 この映画を見に行く前に、私は新聞の批評も見てから行きました。もちろん、新聞によって各作品の評価は異なるのですが、専門家の意見、ということで、映画を見る前または後に読むようにしています。いくつかの新聞や雑誌の批評を読んだのですが、やはり共通していたのは「宮崎監督、最後の作品」、「『千と千尋の神隠し』や『もののけ姫』(フランス語圏で一番知られているジブリの2作品)とはかなり異なる作品、それでもやっぱり宮崎作品の特徴は残っている」というものでした。「千と千尋の神隠し」のようなファンタジーを少し期待していた批評家は少しがっかり気味の人が多かったようですが、それでも前向きな意見が多かったです。

 映画を見ている間で笑いが起こったシーンがあり、自分にはちょっと不思議でした。それは一列に並んで歩いたり、整列するシーン。ちょっと軍隊っぽい日本人のイメージにぴったりと重なるからでしょうか。

 そして、映画を見終えたホストファミリーが最初に言ったのは「intelligent(聡明)」という言葉でした。ゼロ戦の生みの親、という重いテーマ(戦争、隣国との関係など)が映画内で使われています。が、強いナショナリズムのメッセージ、逆に戦争擁護のメッセージも映画内にはありません。それとは別の強いメッセージを表現することに成功している、やっぱり宮崎監督は天才、と言っていました。戦争と隣り合わせの物を使って、あえて戦争とは少し別のことを表現していました。もちろん、映画内に戦争の影は存在していました。が、それでも戦争だけ、について語るのではなく、ある人物を描くという、バランスがすごい、と私は思いました。

 映画内で男女の関係も描かれていましたが、ヨーロッパと日本における感覚の違いは大きいみたいで、その点はやっぱり同意できない部分もあったみたいです。「分からないわけではないけれど、どうして?」と言っていました。

 そして、ホストファミリー、私が映画の中で一番気に入ったセリフはタイトルにも使われているLe vent se lève, il faut tenter de vivre(風立ちぬ、いざ生きめやも)。フランスの詩人Paul Valéryが書いた詩を堀辰雄が訳し、それが映画内で使われていました。フランス語の詩を日本人が訳し、それを日本の監督が映画内で使って、フランス語圏のジュネーブで耳にする、という面白い「輪」を見たような気がしました。
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