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Cher Trésor 後半 [芸術]

 この作品を見ていたのは1時間30分。本当にあっという間でした。

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①役者が全て役に合っていた
 配役が完璧でした。私が期待していたGérard Jugnotも主役のちょっと抜けたFrançois Pignonにぴったり。しかし、それ以上に私が気に入ったのは、帳簿検査人。写真の中でどれか分かりますか?後方右から2人目が、帳簿検査人。この写真では笑っていますが、作品内ではロボットのように淡々としています。本物の検査人が演じているのではないか、と思ったくらいです。検査人定番のセリフ「C’est mon travail.」(これが私の仕事ですから)や「Je trouverai QUELQUE chose.」(何か見つけますから→何か不正を見つけますから)が決まっていました。税務署のお役人さんというのはフランス人から一番嫌われている職業でもあり(「役所」関係は特に。また彼らのお金を吸い取っていくというイメージもあるので)、そういった嫌なイメージがたっぷり表現されていました。実際にこういった帳簿検査人に会ったことはありませんが、私の中でも「淡々と、ロボットのように仕事をこなす」というイメージがあります。

②人間の心理描写が複雑に、細かく描かれていた
 人間は権利やお金というものに引きつけられる動物。これは言葉で表現してみると一言です。が、人間というのはもっと複雑な考え方をするもの。過去の恨みや人間関係が入り組んで、そういった複雑な状況が個人の行動を左右していきます。秘密の財産が存在しない(「お金があった」というのはでっち上げだった)ということが分かると、人は文字通り手のひらを返したように離れていきます。そういった人間の心理や行動が細かく展開されていました。どの登場人物の行動に各自の論理があり、不思議と理解出来てしまいます。

③コメディーであっても、深く考えさせられる
 1時間半笑いっぱなしであったとは言え、随所で人生に関する質問が投げかけられます(さすが哲学の国)。前半は主人公(François Pignon)と検査人の会話が多く展開されます。失業して、奥さんも家を出て行ってしまい、友人も彼から離れていきます。何もかも失ってしまった彼、「自分が存在するため」に帳簿検査をしてくれ、と税務署の人に頼みます。Raison d’être(存在理由)という言葉がフランス語にありますが、仕事や家族というのは自分が存在する理由、証明になっているのだと再認識させられます。仕事は生活の糧を得る手段であることに違いはありませんが、仕事をすることで、自分は他者の役に立ち、自分は存在していると認識する手段でもあるのだと思います。回り回って、結局は自分の存在を確立するためという自己中心的な理由で仕事しているという見方も出来ますが、仕事と自分の存在という関係を考えるのも面白いです。インターンシップをやった後にこの作品を見たせいか、特にこの関係を考えてしまったのでしょうか。

 Ce n’est pas le fait d’être riche qui compte, mais le fait que les autres vous croient riche.(金持ちであることが重要なのではなく、他者が自分を金持ちであると信じることが重要)これがこの作品のキーフレーズ。銀行口座にいくらを持っているかというより、どれだけ派手な生活をしているかが、「金持ち」の指標に今日ではなっている気がします。ジュネーブという金持ちが多い都市で生活をしていますが、どれだけの人が「金持ちである」と周りの人に信じさせているのか、と考えてしまいました。

  と人ごとのように帳簿検査に関する作品を楽しんでいたら自分にもその番が。厳密に言うと、帳簿検査ではなく、税金の話です。検査されるほど財産を持っていませんが、しっかりとジュネーブ州から「個人税」の請求書が送られてきました。「25フランで済むなら安い方だよ」とスイス人からは言われますが、私からすると携帯の料金2ヶ月半分。よく分からない税金は払いたくない、と思い色々調べてみることに。同様に感じた留学生も居るようで、税務署に手紙を書きこの税金が免除されたのだとか。支払期限まで少し時間があるので、私も手紙を書いて問い合わせてみようと思っています。
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