SSブログ

Granet美術館 最終回(スイスの財団) [芸術]

 この美術館の地下では「一時的な展示」と称して、La fondation Jean et Suzanne Planqueという財団が所有する作品の数々が展示されていました。スイスの財団で、この財団が所有する作品を何度か展示したことがあるようです。そして私がGranet美術館へ行ったときは臨時展示。Aixにあるチャペルでこれらの作品を公開するのだとか。なぜなら、この財団が15年間Granet美術館に「貸し出し(預ける)」という形でした。Granet美術館はこの財団の物置なのか、とこの特別展覧会に関する説明を読んだときに私は感じてしまいました。10数作品しかありませんでしたが、有名な画家の作品ばかり。ピカソ、セザンヌ、レンブラント。さすがスイスの金持ち財団が所有するだけあって、という感じでした。が、少し寂しい感じもしました。Granet美術館、「地元」の芸術家を展示しているとは言え、入場者を引きつけるのは今のところセザンヌの作品だけ。自分にとっては贅沢な経験だったけれど、土曜の午後に鑑賞者がほとんど居ないというのも心配になってきます。26歳以下の学生というわけで入場料も免除。この美術館、大丈夫かなと思ってしまいます。

 他の「目玉」作品がないため、財団の貸し出しが行われているのだと思います。15年の期間が終わったら別の作品が展示されるのかどうか、興味があります。

573.jpg
 ちなみにこの財団、貸し出しだけではなく、寄付もしているようです。自国(スイス)出身の画家、パウル・クレーの作品もいくつか寄付されていました(写真もクレーの作品)。が、彼の作品も旅に出ていて、この日は残念ながら見ることが出来ず。そしてセザンヌなど同様、彼の作品もほとんどが海外に出てしまっているようです。

Granet美術館 その2 [芸術]

572.jpg
(美術館入り口)
 Granet美術館の目玉なのが、セザンヌの作品。彼だけの展示ブースが設けられていました。彼の有名な山の絵、「サント・ヴィクトワール山」はワシントンDCやロンドンなど別の大都市にあります。出生/活躍した場所VS資金力のある大きな美術館、大芸術家になればなるほどこの戦いは芸術家の死後に激しくなるものです。Granet美術館はGranetを記念した美術館ではありませんが、セザンヌの作品を展示するために建てられた美術館でもあるような気がします。例えば、ピカソの「ゲルニカ」はニューヨークの近代美術館にあったようですが(1981年まで)、今はスペインに無事帰国。国立ソフィア王妃芸術センターという場所で展示されています。スペイン語の先生によると、この芸術センター、「ゲルニカ」の為に建てられたのだとか。フランコ政権が崩壊した後、別の美術館へ行き、この芸術センターへ帰国を果たしたそうです。そして、このGranet美術館にピカソの作品も多く展示されていました。パリやスペインで活躍した画家なのに、と思って帰宅後調べてみると、亡くなったのは南フランスのニース(そういえば、ゴッホやゴーギャンなど有名な画家は皆人生の一時期を南フランスで過ごしています)。南フランスの地方で活躍した画家の一人として数えられているからでしょう。

 Granet美術館に話を戻すと、作品を集めるのには苦労したよう。展示作品の中には多くルーブル美術館やオルセー美術館から「寄付」されたものが多くありました。特にルーブル美術館などは所有している作品が多く、一般公開されておらず、地下に眠っているものも多いと聞きます。地下に眠らせておくよりは公開しようと思って「寄付」したのか、本当の理由は不明です。が、この不景気にほぼ毎年入場者数が増加傾向にあるルーブル美術館とオルセー美術館、数作品寄付しても問題ないのでしょう。ただ、Aix-en-Provence側からすると、美術館が出来るまでパリの美術館に預かってもらったもの、なのかもしれませんが(この美術館は。

 セザンヌの「大水浴」が、展示されていた中で有名な作品だったのですが、中心に飾られていたのは最近Granet美術館が購入に成功したEmile Zolaの肖像画。Aix-en-Provence市との共同出資で、見事オークションで落札したのだとか。市と美術館がオークションでこういった有名作品を落札出来たのは稀な出来事だ、と「宣伝」されていました。

 とセザンヌ の展示ブースまでたどりついたのですが、作品のいくつかは「旅」に出ていて、見ることが出来ず。ハンガリーで「セザンヌの過去と今」という展覧会をやっているため、そこに貸し出されてしまったよう。残念です。彼の作品をAixで見るには、彼のアトリエへ行かなくてはなりません。ということで、Aix-en-Provence滞在中、彼のアトリエへ行ってみることにしました。この記事を書いている現在、まだ行くことが出来ていません。行き次第、報告の記事を書こうと思っているのでお楽しみに。

Granet美術館 その1 [芸術]

 Aix-en-Provenceに来る事が決まって、この都市の観光事務所のホームページをチェックしました。セザンヌの出生地として有名なようで、Granet美術館の名前がヒットしました。週末は仕事がないため、この美術館へ向かうことにしました。

 冬の営業のため、開館は12時から。お昼を早めに食べ、ほぼ開館と同時に美術館へ向かいました。26歳以下の学生は無料、学生証を提示してチケットをもらい入館。晴れの日であるAix、そしてセールの真っ最中、美術館に人はほとんど居ませんでした。ブースには私だけ、そして2人の管理人という状況が多くありました。特に危険人物ではない私、どのブースでも特に声をかけられることもなく、のんびり鑑賞出来ました。また管理人は暇つぶしに「数独」をやっていたり、ダウンロード出来ない音楽ファイルについて語ったり、自由気ままでした。誰も居ない展示室で絵画などを「独り占め」するかなり贅沢な経験でした。

571.jpg
(François Marius Granet、彼を記念した美術館です)
 Granet美術館、自分は聞いたことがない美術館でした。GranetというAix-en-Provence出身の画家を記念した美術館だそうです。そのため、最初の展示ブースは彼の作品(主に宗教絵画)、そして彼の肖像画などが飾ってありました。その後は、絵画、彫刻など様々な作品がありました。そして共通点はAix-en-ProvenceやMarseilleなど南フランス地方出身者やこの地方で活躍した芸術家の作品であるということ。彫刻は、ナポリの国立考古学博物館 やルーブル美術館の方が貯蔵数は多く、迫力もありました。が、このGranet美術館もテーマでは負けていませんでした。全て、Aixなど南フランス出身の芸術家達。知らない名前ばかりでしたが、なぜかミラボーをモデルにした彫刻が多かったです。彼の出身地がAixだからと思って調べてみましたが、正反対、北フランス出身。ライオンのような特徴ある顔なので、彫刻のモデルにぴったりだったのでしょうか。

 この地方出身の芸術家で固めているため、展示する絵画の分け方も通常(年代別)と異なっています。自分が面白いと思った展示は「年齢別」の肖像画。子供と大人(50代)の肖像画を対にして展示していました。子供と大人と言葉は対になっていますが、展示されている作品は一見すると、どれも異なって見えます。描かれた年代も、背景も異なるため共通点が見えません。が、よく見ると大人には大人の共通点があり、子供には子供の共通点があって面白かったです。子供はよく宗教画として描かれたようですが、しばらくすると肖像画の対象となっていきました。肖像画でよく見られるのはいたずらっ子の表情。一点を見つめているだけのように見えますが、必ずいたずらしそうな要素が含まれていて、「子供っぽい」感じがよく伝わってきます。逆に大人は、誰しも少し寂しそうな感じがしました。人生を長く生きてきて人生の苦労が分かっているのか、それとも人生の終わりが近づいてきているからなのか、子供と比較すると少し寂しい気がしました。「年齢別」の展示により、普段とは異なる見方をすることが出来た肖像画でした。

A la française (2013) [芸術]

565.jpg
 来月、パリで劇を見に行くので、今パリでやっている芝居を色々確認していました。その中で見たいと思ったA la françaiseという作品がテレビで中継されていました。芝居をテレビで中継したら、見に行く人が減る、と思ってしまうのは、芝居の良さがまだまだ分かっていない素人だからでしょうか。地上波放送ですが、中継のためコマーシャルなし。2時間弱でしたが、あっという間でした。

 G20がパリで行われるため、その準備に追われる大統領とスタッフ。G20の開会式(晩餐)でフランスを外国のトップに売り込むというのが、大統領にとって大きなミッション。が、何を売り込めば良いのか。G20の24時間前になっても、まだ決まらず。「フランスとは」という永遠の質問をテーマに芝居が進んでいきます。フランスとは何か、定義しようとする作品が出てくること自体フランスらしいと思いました。

 最初は物質的なもの(エッフェル塔、TGV、ルーブル美術館)のアイディアが出てきますが、フランス人的考え方(恋愛、ナンパ)なども出てきます。いわゆるフランス人やフランスに関する固定観念がいっぱいの作品でした。フランスを外からの視線で見ている私、「分かる!」と思う部分がいっぱいでした。セリフなどはもちろん、芝居の進み方自体が「フランス人っぽい」と私は感じました。例えば、誰かがアイディアを言うと「良いアイディア。でも・・・」と必ず反対意見が出てきます。話し合いだけが続いて、先に進まないという様子が芝居で描かれていて、フランス人っぽい考え方だと笑ってしまいました(動くより話し合いが優先するフランスならでは)。

 またフランス語に欠かせない「jeu de mots」もたくさん出てきました。これは日本語で言うと「ダジャレ」です。英語に比べると、ダジャレが多く存在するフランス語(フランス語という表現の豊かさのおかげ、とフランス人は誇らしげに説明してくれます)。ダジャレが多く存在する言語で育って来た私、jeu de motsも結構好きです。少しレベルが高いと理解出来ない時も多いのですが(隠語が使われる時も多いので)。