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「翔ぶが如く」(by 司馬遼太郎:1972) [読書’15]

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 歴史小説/マンガは長期休暇に読む物、と決めています。時間があるということと、寝不足の日が続くからです。マンガの「三国志」は中3の春休み、「竜馬がゆく」は大1の夏休みに読みました。どちらもかなりの大作で、休み中といえども、読み終わるのに結構時間がかかったと記憶しています。今回の夏休み(前半は教習所通いでしたが)にも、新たに歴史小説に挑戦してみることにしました。司馬遼太郎作品はいくつか読んでいるのですが、大作で読んでないものが結構あります。サラリーマンや政治家の間で人気の「坂の上の雲」か「翔ぶが如く」のどちらかを読んでみようと思っていました。父が「翔ぶが如く」を読んでいたので、遅れて私も読み始めました。

 文庫本10冊なので、かなりの長さでした。そのため、最終巻を読破した時には「終わってしまった」というより、「終わって一息つける」気持ちの方が大きかったです。明治初期の10年、大久保利通に言わせると「創業の時期」が描かれています。単純計算すると1年の出来事が1冊(約300ページ)ごと描かれているので、かなり密度の濃い作品でした。しかし、当時の社会に勢いがあって、作品の密度が濃くなっているのではなく、どちらかというと「終わり」へ向かっているような寂しさがありました。私が以前に読んだ司馬遼太郎作品は、戦国、幕末のものだったので、各作品に一種の勢いがあった気がします。しかし、「翔ぶが如く」の序盤では、倒幕で活躍した坂本龍馬を始めとするあの人、この人は既に居なくなってしまっている感じがあり、後半では明治後のあの人もこの人も病気で亡くなってしまい、寂しくなってしまいました。

 「翔ぶが如く」は西南戦争前後の日本が描かれているので、鹿児島も多く登場します。妹が鹿児島に住んでいるので、いくつか知っている地名も出てきました。妹の住んでいる近所はかなり田舎なのですが、そういった場所が歴史的な出来事の舞台になったりしていて、びっくりしました。歴史の短い北海道に住んでいると、歴史的瞬間の土地というものを感じることがないので、ちょっとうらやましいです。北海道で歴史的に重要な場所と強いて言えば、土方歳三が戦った箱館戦争でしょうか。

 また、初めて鹿児島へ行ったときにも感じたことなのですが、鹿児島での西郷隆盛に対する根強い人気は明治維新から来ている、ということを、改めてこの本を通じて再認識しました。土産に始まり、鹿児島市のあちらこちらに西郷隆盛があってびっくりしました。学校の歴史の授業では、どちらかというと「西南戦争を起こした人」という風に教えられたと記憶していますが、鹿児島の人は異なるとらえ方をしている気がします。当時は更にインターネットも存在していない時代。西郷隆盛の姿を知っている人はほとんどおらず、各自独自のイメージを持っていたようです。「あの人が西郷隆盛だとは知らなかった」という話も多くあり、そのために出来事が動いたこともあったようでした。

 長く、密度の濃い小説でした。
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tommy88

そう、まさに「勢い」がないのでした。
どちらかと言うと、鬱になりそうな「関所」が随所にありました。
何度か読むのを中断し、休むことが多かったです。
一気に読ませる、登場人物の「勢い」がなかったですね。
ネズミの大群の自殺的大移動のような空しい勢いはありましたが。
昨日の「ブラタモリ」は博多でした。
こういう歴史ある街が、魅了してくれます。
博多と福岡の違いは、黒田様が来て福岡が出来た。
博多は歴史があり、平安、室町時代の痕跡がある。
そういう街が好きで、12月にまた行くのでした。
by tommy88 (2015-09-20 07:57) 

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