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Underground :The Tokyo Gas Attack and the Japanese Psyche (by Haruki Murakami:2000) [読書’15]

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 原題は「アンダーグラウンド」、地下鉄サリン事件の被害者、関係者のインタビューを元に書かれた作品です。この本は、ずっと読もうと思っていて、機会を逃していました。というのも、スイスやフランスでは、 この地下鉄サリン事件について、結構詳しく知っている人が居てびっくりしたのです。事件の背景、起きた時刻や場所も詳しく知っていて、「それほど大規模に海外のニュースでも取り上げられたのか」と最初は思っていました。しかし後々、村上春樹がこのインタビュー集を出していたのが大きな理由だということに気づかされます。そこで、彼の作品を英語で読んでみたらどんな感じなのか、と思い、今回は英語で読んでみました。

 この作品では、インタビューをまとめて、一連の事件を描いていました。単に、「○時○分に、△線で、事件が発生した」という事実が語られるだけより、より説得力がありました。例えば、最初にホームの不審物に気づいた駅員Aさんの行動が描かれ(別の駅員に連絡し、到着した車内で倒れている人を目撃しetc)、次の章では駅員Aさんから連絡を受けた駅員Bさんの行動が描かれ、更に車内に居た乗客からの視線、と事件に巻き込まれた様々な人の視点からこの事件を追っていきます。もちろん、見方によって異なる部分はあるけれど、一致している部分も多くあり、この部分は単に何が起こったかを伝えられるより、更に説得力がある気がしました。序章に作者が「本当に何が起こり、その時そこにいた人が何を感じ、見たのか」を知りたいというのが本を書くきっかけというようなこと書いていました。まさに、事件に巻き込まれた人(そしてインタビューを受けることを許可した人)が一つの出来事、話を語っていくという形でした。

 後半部分は、オウム真理教の元信者達へのインタビューでした。こちらはどちらかというと、地下鉄サリン事件というよりかは、オウム真理教内でどんなことが起こっていたのかという全体像がインタビューから見えてくるという感じでした。

 私は地下鉄サリン事件が起きた当時については、小さかったせいかあまり覚えていません。東京がどれほど都会であるかということも、漠然としたイメージしか持っていませんでした。ただ、東京で実際地下鉄やJRに乗って通学した経験がある今、この事件に関する本を読んでみると、ゾッとします。時期は異なっていても、この事件に巻き込まれた人達と同じように、私もほぼ毎日同じ地下鉄/JRに乗って、また乗り換えが便利な特定の車両に乗って通学していたからです。良いノン・フィクションの作品を読むことが出来ました。
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