SSブログ

知床へ行こう! 6(番外編:「箱」を上手く使って規制する) [旅'14]

 この知床へ行って、思い出した大学の授業があります。大学の授業と言っても、一度オーストラリアで聴講しただけの授業です。授業名はよく覚えていませんが、確か「街の発展」とかいう授業でした。私が聴講した時のテーマは「スペースが人の行動を作り出す」というものでした。要するに、街の作り方によって、その街での過ごし方が変わる、ということです。この授業で挙げていた例が、週末のみの遊歩道。普段は車が通っている場所を遊歩道にする試みがあり、この試みによって普段は道路というスペースに全く関係ない人、歩行者がスペースの主役になるわけです。「週末は遊歩道」というルールを作って、車を排除し、歩行者を入れ込む、大きな「箱」が出来上がる。通常はこの「箱」をシステム、という風に呼ぶのだと思います。が、私のイメージとしては、ある目的を達成するために、運営側が「箱」を作り出して、その箱の中には目的を達成するための行動が出来る人のみが入れる、という意味で「箱」という言葉が浮かびました。人によっては、「線」とかいう言葉の方が合うのかもしれません。

 この授業が私にとって印象に残るものとなった理由が、「ルールが人の行動を(無意識の内に)コントロールしている」と感じたからです。ルールが人の行動を制限するものだ、というのは頭で理解していました。が、ルールがコントロールする、とは普段あまり感じていませんでした。数年も前に受けた授業ですが、今でも結構印象に残っていて、理由不明なルールがあったりすると、「このルールで何の行動をコントロールしようとしている?」と考えるようにしています。

 なぜこの授業を知床にて思い出したのかというと、少し複雑なバスの利用方法。知床自然公園内(知床五湖、カムイワッカの滝etc)の移動はこの時期、ほとんどがバスです。車で行こうと思えば、知床五湖までは行けます。しかしこの場所から、カムイワッカの滝へ行くバスに乗ることは出来ません。バスのチケットを買う場所もこの知床五湖にはありません。そのため、知床五湖とカムイワッカの滝へ行きたい人は、始発である自然センター(公園入り口)に車を置き、バスに乗って知床五湖で下車、再びバスに乗って、カムイワッカの滝へ向かうことになります。始発から乗ってきた人はチケットを既に持っているので、知床五湖から途中乗車をしてカムイワッカの滝へ行くことが出来ます。一見すると、少しややこしいシステムです。が、この方法で入場者を規制しているのです。運営側としてはたくさんの人に来てもらいたいけれど、同時に車で空気汚染されても困る。本当に訪れる気がある人だけを入れるためには、どんなルールを用意したらよいのか。知床五湖までは入り口に近いし、また観光客が一番に訪れる場所だから車は許可。でもカムイワッカの滝には、本当に来たい人だけに来てもらえるよう、車は禁止。知床五湖に来るだけの人とカムイワッカの滝へ行く人、どう分けていくか、バスの乗り方を変える、となったのだと思います。バスの乗り方という「箱」を使って、その中に入れる人、入れない人を分け、運営側の目的を達成する、知床公園の運営方法が見えるルールでした。その効果は現れていて、カムイワッカの滝へ来る人は、知床五湖に比べると、ぐっと減っていました。

 公園のルールから、「ルールによる行動のコントロール」という少し難しいことを考えながらバスに乗ってしまいました。森林の中を歩いて、頭の中がリフレッシュしたせいでしょうか。
1048.jpg
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0