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不思議なポスター [政治]

 以前の記事で、来週末にある国民投票の話題を書きました。その中でも各党が作るポスターについて少し触れました。そこで今回は2013年9月にあった投票で、とても印象に残ったポスターについて書いていきたいと思います。

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 こちらがそのポスターですが、上には「ローストソーセージを合法化に」と書かれています。右下には「9月22日、仕事の法律にOUI」と書かれています。最初に目に付くのはやはり大きなソーセージと「合法化」です。そのため、このポスターを初めて見たときは、「動物愛護団体が押しているイニシアティブ(提案議題)」かなあ、と思っていました。消費のために殺される動物が多いから、それに対する法律を作ろうとしているのかなあと思っていました。すると、謎なのが「仕事の法律」です。ホストファミリーとも「何の議題に対するポスターなんだろうね」と話をしていました。

 投票日が近づいてきたころ、私が読むLe Courrierというフランス語圏スイスの新聞に答えが載っていました。タイトルは忘れてしまったのですが、「ローストソーセージの法律は」といったような題で社説を載せていました。このポスターは「ガソリンスタンド営業時間延長」に関する議題に賛成のポスターだったようです。

 背景を少し説明すると、スイスのガソリンスタンドで販売出来る品物の規制緩和です。スイスのお店はたいてい18時頃には閉まり、日曜には営業していない場所がほとんどです。例外がガソリンスタンド。24時間営業しています。全てのガソリンスタンドではなく、決まった高速道路近くにあるものだけです。が、これまでの法律では、朝(1時~5時)までは野菜、ソーセージなど調理を必要とする物の販売は禁止となっていました(つまり24時間販売しているのはガソリンとその他コーヒーだけ)。夜間の従業員の苦労を減らすためです。

 日本ではコンビニなど24時間、365日営業など当たり前です。が、ヨーロッパ、少なくともフランスやスイスでは、年中無休、24時間営業する場所はかなり珍しいです。宗教的な習慣というのもあると思いますが、「人間に休みは必要。朝起きて、夜は寝るという人間らしい生活は失われてはならない」という考えがこの地域には根強く残っている気がします。

 ガソリンスタンドの規制緩和(調理が必要な物も販売可能)は、労働搾取の始まりになる、という意見が広まっていました。新聞にも、この投票可決は、「l’égoïsme de consommateur(消費者のエゴ)」に過ぎない、と強いメッセージを含んだ社説を投票前に載せていました。が、結果は賛成多数でイニシアティブは可決でした。ダムが決戦するように、ガソリンスタンドの規制緩和をきっかけに、スーパーなど他の量販店に広まる可能性がある、と反対派は懸念していたようです。

 結果的に、このポスターを作った党の望む結果になったわけです。話題として、新聞にこの「ソーセージ」がキーワードとして多く登場したのも事実です。が、果たして投票する議題を正しく伝えることが出来たのかは、かなり疑問です。数ヶ月前の投票でしたが、今でも強く印象に残っています。
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