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夏の読書 その15 [読書’13]

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 今回紹介するのも、あまり馴染みの無い国の作家。Le vieux qui lisait des romans d’amour(ラブ・ストーリーを読む老人)という作品です。チリの小説家Luis Sepúlvedaという人が書いたものです。スペイン語の授業でスペイン語の短編小説(本当に短い話)を何度か読んだことがありますが、それ以外でスペイン語圏の小説に触れたことはありませんでした。理想は原語であるスペイン語で読むことですが、結局フランス語で読んでしまいました。ちなみにこの作家、この作品のフランス語訳が驚異的なヒットを記録して有名になったらしいです。フランス語訳も悪くはない、ということなのでしょうか。

 原語で読んでいないので一概の比較は出来ませんが、フランス語訳を読むのは不思議な感覚でした。フランス語で書かれていても、スペイン語圏らしい雰囲気が出ていると感じました。私が持つスペイン語圏の人のイメージは「とにかくよく喋る」なのですが、小説内の会話のシーンではまあ会話が多い!本当におしゃべり好きな人たちだと実感します。

 「ラブ・ストーリーを読む老人」という変わったタイトルではありますが、結構政治的な内容も含まれています。これも政治を語るのが好きなフランス語圏の人たちに好かれた理由の一つでしょうか。この小説家、政治犯として投獄生活も送ったことがあるようです。彼のこういった経験も小説に強く影響していると思います。印象に残っているシーンは選挙期間。主人公の老人は森林に住んでいて、社会との接触はほとんどありません。ある日街に行き選挙があることを知り、「投票する権利がある」と教えられます。そしてこの老人は「その『権利』とはどこで買えるのか?」という質問をします。このシーンが、自分には衝撃的でした。自分には当たり前に存在している物が、他人にとっては未知の世界。投票の権利、購入する必要はないけれど、世界の多くの場所では購入する以上に難しい行為が投票だと思います。このシーンを読みながらそんなことを考えてしまいました。
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