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夏の読書 その14 [読書’13]

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 今回紹介するのはミラン・クンデラの「La valse aux adieux(別れのワルツ)」です。チェコの本を読むとは思っておらず、自分でもびっくりでした。もちろん、チェコ語は分からないのでフランス語でしたが。名前は何となく聞いたことがありましたが、本屋へ行って最初に手に取るような小説家では決してなかったと思います。

 それほど縁が無い本でしたが、読むことが出来た本当に良かったです。ホストシスターが夏の初めに読んでいて、ホストマザーもつい最近まで彼の作品を読んでいました。私も次は何を読もうか、と思っていたところでした。本当にテキトーに手に取った小説でしたが、読みながらグングン引き込まれてしまいました。話も自分好みではなく、読みながら「自分の好きなジャンルでは無いのに、なぜこれほど引き込まれるのだろう」と思い、その「なぜ」を知るために読み切ったと言っても過言ではないかもしれません。結局読み終わってもその「なぜ」は分からなかったのですが。

 各登場人物、少し変わっているのですが、決して現実世界に居ても不思議ではない人たちでした。この登場人物達の数日間が描かれているのですが、心理描写が面白いです。登場人物の心理描写が上手い作品はいくつかあります。が、的確過ぎると、自分の心理を見透かされているような気がして、ちょっと変な気分になります。そのため、的確過ぎる心理描写は個人的にあまり好きではありません。が、この小説の心理描写は 、「分かる、そういう表現は自分でしないけれど 」という微妙なさじ加減が良かったです。読者(自分)とは異なる表現の仕方、しかし分かりやすい表現が多かったです。

 本自体も面白かったのですが、出版までの経緯もまた興味深かったです。基本、小説は原語で読むように努力し、翻訳にはなるべく頼らないようにしています(自分の知っている言語で書かれた場合のみ)。もちろん、翻訳にも素晴らしい作品があると思いますが、やはり作者自身が書いた言葉で理解したいという気持ちが強いので、オリジナルを読むようにしています。が、今回のように自分の全く知らない言語で書かれた場合は、翻訳に頼ることになります。しかし、この小説、完全に「翻訳」とは言えないようです。というのも、ミラン・クンデラはフランスの市民権を取得し、今ではフランス語で執筆することもあるほどだそうです。この「別れのワルツ」も最初はチェコ語で書かれ、他の小説同様、フランス人がフランス語に訳して出版。そして1985~1987年の間、クンデラ自身がその訳を見直して、また新しく出版された、という経緯があるようです。私が読んだのはその、「著者によって見直された」版です。最初のフランス語初版を読んだことがないので、比較することは出来ません。が、著者がどの部分をどう(納得せず)改訂したのか少し気になるところです。
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