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夏の読書 その11 [読書’13]

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 今のところ、自分の夏の読書トップに入っているJoël DickerのLa Vérité sur l’Affaire Harry Quebertを読んで1週間後、彼の作品をもっと読んでみたいという気になり、図書館で彼の他の作品を借りてみました(今のところ出版しているのは、2作品のみ)。どの図書館も貸し出されていて、予約をしなくてはなりませんでした。日本の便利な図書館と異なり、予約する図書館を指定出来ないので、どこの図書館が予約してくれるかどうかは運次第。ラッキーなことに自分が行く図書館で予約が取れたので、早速読んでみました。

 タイトルとは「Les Derniers Jours de Nos Pères」(私たちの父親の最後の日々)と悲しい題がつけられています。SOE(Special Office Executive)という第二次世界大戦中に活躍したイギリスの特殊戦争執行部が舞台となっています。フランスのレジスタンスとして活動するため、イギリスの特殊部隊で訓練を受ける若者達が主人公となっています。傍聴、隠れ家の確保などスパイに関することを多く学びます。10人以上の主要人物が居るため、名前と特徴を書いたお手製のメモが欠かせませんでした。

 最初の100ページはこの訓練での出来事が多く書かれ、あまり興味はわきませんでした。が、訓練を受け実際にフランス、イギリス各地に派遣されると一気にストーリーが興味深くなっていきました。また、主人公(だと思っていた)Palの父親はパリに住んでいるのですが、その出来事も少しずつ描かれています。一昨年前私が住んでいた場所、そして通っていた学校の近くにこの父親も住んでいるため、話の中に登場する通り名も馴染みのあるものばかりでした。

 フランスのスパイを探るため、ナチス軍のスパイもパリに乗り込んできています。SOEがメインなので、ナチス軍側のスパイは一人を除いてほとんど登場しません。が、そのナチス軍のスパイも一人の人間として書かれていました。イギリス、フランス、ドイツ、と属している場所は異なっていても、各自様々な個人事情を抱えていて、そういったことに焦点が当てられていました。戦争が原因で敵対する仲であったけれど、個人として見てみると皆「家族のため」に行動していることがよく分かります。

 訓練中はPalに焦点が当てられ、常に三人称ではありますが、彼の視点からほとんどのことが語られていました。が、第二部に突入すると彼の父親など、Pal以外の視点も多く入ってくるようになってきました。Palが主人公だと思っていた私はちょっと驚いてしまいましたが、タイトルを見直してみると納得。なぜ、「私」ではなく、「私たち」と複数になっているのかがよく分かります。

 前回読んだ本が、かなりの評判だったため、処女作を読むのを少しためらってしまいました。2作目ほど面白くなかったら、と余計な心配をしてしまいました。2作目同様テーマは重いです。だからこそ、ホッとする場面、ちょっとした心温まる部分は読んでいて本当に嬉しくなります。2作目同様、一気に読み終わってしまいました。ただ、この作家まだ2作しか出版していないので、これで彼の作品を全て読んだことになります。次回作が発表するまで、彼の作品は読めない、これが唯一、この本を読んで残念だった点かもしれません。
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