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L'enfance volée [芸術]

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 「奪われた子供時代」という展覧会に行って来ました。スイス国内で養子に出された子供の証言を集めた展覧会でした。展示会場の入り口には「もちろん、養子に出されて幸せな人生を送った人も多く居ます。がこの展覧会ではそういった人をテーマにしているのではなく、あくまでも苦労した人たちに焦点を当てています」という但し書きがされていました。一応覚悟して見に行ったのですが、それでも証言を読んでいくと、大きなショックを受けます。

 他国同様、スイスには色々な事情で養子に出される子が戦後に多く居たようです。その多くは田舎の家庭に引き取られたそうです。が、田舎は良くも悪くも閉じられた世界。養子は「労働者」と見なされていただけで、奴隷のような生活を送っていたという証言が多くありました。

 複数の言語が使われているスイス国内で、州をまたいでの養子手続きはさぞ難しかっただろうと思います。もちろん、そういったことは考慮されて、受け入れ先は選ばれていたようですが。言語について詳しい証言はありませんでした。が、宗教の違いは大きな問題となっていたようです。スイスはほとんどがプロテスタントですが、カトリックの州もあります。カトリックは特に他の宗教の人を受け入れない考えが強いので、プロテスタントの養子はカトリック教会の助けを受けることが出来なかったのだそうです。田舎では教会が、恵まれない子供(養子を含め)の面倒をよく見ていました。が、その子供がカトリック教徒であることが条件。プロテスタントの子供は「関係ない」という態度だったようです。もちろん、逆にプロテスタントの家庭(村)にカトリックの子供がやって来たとしても、同じような状況だったと思います。

 スイスでも「養子」というとアフリカやアジアの恵まれない地域から、子供受け入れる、というイメージがあるようです。そのため、私が「ホストファミリーと住んでいる」という話をすると、よくフランス人/スイス人から「孤児?本当の両親に会ったことはあるの?」と聞かれることがあります。フランス語でも英語でも、養子の受け入れ先、語学/留学の受け入れ家庭、を表現する時はどちらの場合も「ホストファミリー」という言葉を使います。ヨーロッパはアジアの子供を養子にとる家庭も存在し、「ホストファミリー」というと、「養子(孤児)の受け入れ先」をイメージする人も多いのだと思います。そういった強い固定観念が存在しているため、国内の養子事情について光を当てたこの展覧会、良いテーマだったと思います。
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