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Home, sweet home [言葉の勉強]

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 居候生活を数年前から続けているため(既に4年が過ぎました)、「家」の定義が曖昧です。「我が家」は今でも札幌です。が、今のところジュネーブがホームベースのため(たとえパリをも「家」のように感じていても)、ジュネーブを「家」、ととりあえず呼んでいます。インターンシップの生活1ヶ月+パリ滞在数日を終えて、「家」に戻ってきました。まだまだAixでの生活について書き切れていないことがあるので、ジュネーブに居ながらまだ少しずつ書いていこうと思っています。今回はとりあえず、ジュネーブに無事戻ってきた、という報告です。

 パリからジュネーブ直通のTGV、Lyriaに乗って戻ってきました。フランスとスイス半々の新幹線ですが、パリ発、もちろん遅れてジュネーブには到着。新幹線なので、ほとんど停車することなく(ジュネーブから15分ほどの小さな街に停まるのみ)、3時間ちょっとでジュネーブに到着しました。ジュネーブに向かう途中で長めのトンネルに入ります。そして気分は、「雪国」。

 「Au sortir du long tunnel de la frontière, on se trouvait au pays de neige. Le fond de la nuit avait blanchi.」(国境の長いトンネルを出ると、雪国にたどりついた。夜の底が白くなった)

 フランスからのトンネルを抜けると、真っ白な雪国であるジュネーブに到着しました。(この小説はまだ読んでいませんが)、日本文学の有名な「雪国」の冒頭を思い出しました。さて、フランス語では何と言うのか調べてみると、すぐに訳が見つかりました。フランス語版では何人かの人がこの作品を訳しているようです。2つの異なる訳を比較しているサイトから、この冒頭を引っ張ってきました。各訳、良い部分があるのですが、シンプルな方(Cécile Sakai訳、分かりやすく「訳1」とします)を使って、それをまた自分で日本語に「訳し直して」(直訳して)みました。もう一つのバージョン(Bunkichi Fujimori et Armel Guerne訳、「訳2」とします)はこちら。

 「Un long tunnel entre les deux régions, et voici qu’on était dans le pays de neige. L’horizon avait blanchi sous la ténèbre de neige.」(二つの地域の間にある長いトンネル、そして雪国へ。地平線は雪の闇の下へと白くなった。)

 作品全体を読んでからでないと、どちらが良いのか、はっきりとした意見は言えません。が、このとても有名な冒頭部分のみを比較してみると、両者に良い部分があります。

 例えば、最初の「国境のトンネル」の部分。直訳で言えば、訳1の方が忠実に訳されています。そのため、最初は私も訳1の方が好きかな、と思いました。が、よくよく考えてみると、訳2の方も理にかなった表現。日本でも行政上の区画を「国」と言うことがあります。ドラマ「北の国から」も、本当に北にある「国家」を指しているのではなく、あくまでも北海道という地域を指しています。そういう考え方に経てば、この「国境のトンネル」も異なる地域/地方の間にあるトンネル、つまり訳2の表現のように「2つの地域」のトンネルと言えます。

 また、最後の「雪の底が白くなった」も訳1、訳2、両者に良い部分がありますが、私は訳1の方を好みます。なぜなら、日本語を忠実に訳していて分かりやすいからです。訳2の同部分は、日本語にすると少し分かりづらいです。最初は「なぜこんな複雑な訳をするのだ?」と思ったのですが、フランス語のみを読んでみると、納得。フランス語の流れに合わせて訳されています。訳2の方を声に出して読むと、
Un long tunnel entre les deux régions,
et voici qu’on était dans le pays de neige.
L’horizon avait blanchi sous la ténèbre de neige.
フランス語も韻が大切な言語。最後の2部分が「de neige」で終わっています。聞いていて、とても心地よい文章の流れになっています。

 日本語訳により忠実なのが訳1、フランス語での表現を重視しているのが訳2というのが私の印象です。もちろん、この有名な冒頭部分を比較した時の場合ですが。
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